セシウムよりも、そもそも気になる和牛の話

わたくしには食べものによって反応が出る危険度自動センサーがついております。
ほっぺたにカイカイができるレベル1。右の下まぶたが腫れてひどい顔になるレベル2。
食べて約2時間後におなかがピーピーになるレベル3。和牛にはこのレベル3が稼働します。
しばらく前の話ですが。
和牛のセシウム残留をテーマに、BSフジ『プライムニュース』で、
大塚耕平厚生労働副大臣が以下のような主旨のコメントをしていましたよ。
「セシウム137の生物学的半減期は約3カ月と言われているため、
3カ月出荷を止め、牛の体内からセシウムが排出されるのを待つ」
「ワラは和牛を作る際の仕上げに使う餌である」
「ワラを食べないことで、サシ等の肉質が変わることがあるので、
消費者には、和牛の品質が多少変わることについてご理解をいただきたい」
セシウム137の生体半減期は100日程度と言われているので、
今あるものが排出されるのを待って出荷再開って話はわかるのですが、
「ワラが和牛の仕上げに使われるから品質が低下」というコメントには
「???」という方がほとんどだったんじゃないかと思ったわたくしでした。
和牛の作り方を知らないと、何のことかわけわかんないです。
写真がないので今まで書かずにいた肉牛ですが、ちょびっと書いてみます。
(ってことで、今回は適当な写真がありませんです)

ホルスタインの写真がないので、乳・肉兼用牛「ブラウンスイス」のご紹介。
乳牛に乳を出させるためには出産が必要だけど、必要なのはメス牛だけ。ってことで、
生まれたオス牛は去勢されて肉牛として育ちます。最近は黒毛の受精卵を移植し、
ホルスタインの腹を借りて黒毛を出産させることもあるんだとか。一石二鳥だけど、いやはや。
まず基本情報ですが。
肉牛は大きく分けて「和牛」と「国産牛」に分類されます。
和牛はブランド牛ですね。黒毛とか短角とか、いろいろあります。
国産牛はざっくり言うと和牛以外の牛の肉。
スーパーではだいたいホルスタインの去勢牛の肉を国産牛として売ってます。
BSE以降、牛は個体識別できる仕組みが作られているため、
誰が作ったのか、どこに出荷されたのか、きちんとトレースできるようになってます。
今回のセシウム騒動で出荷先を追いかけることができたのは
BSEのおかげなのでした。※BSE=狂牛病のこと
さて、肉牛は通常生まれてから36カ月程度で出荷されます。
最高級品質の黒毛和牛になれるのは、子どもを産まないメス牛だけ。
(牛の世界では価値あるオスは種オスだけなのです。悲しいっすね)
育成牛(生後一年位まで)の期間は、牧草などを食べているのですが、
肥育期間に入ると穀物主体の配合飼料に変わります。
この期間に体を大きくし、脂肪交雑率を多くするのです。
つまり、和牛独特の網目のような「サシ」を入れる期間ってことです。
(以降は主に黒毛和牛の作り方になります)

穀物をうまく組み合わせた配合飼料は、おそらくブランド牛ごとに違うはず。
適正な脂肪交雑を生む秘密のレシピとかありそうです。ビールなどもその一環でしょう。
そもそも反芻動物である牛に穀物を与え、ほとんど運動させず、
ビールなんか飲ませたりして牛をメタボリックな状態にします。
筋肉に脂肪が交雑するのですから、相当な状態です。ご想像ください。
黒毛和牛の内臓はほとんど商品にならず、廃棄処分されますから、
内臓にもかなり負担がかかっているのでしょう。いやはや。
この間、脂肪には飼料のビタミン群の影響で、色がついています。
ビタミンの色って、まあなんというか黄色っぽい色。
でも黄色いサシなんて変ですよね。おいしくなさそうです。
で、その色を抜くために、ワラを食べさせるのでした。
これが和牛の「仕上げ」です。

コンバインの普及によりワラは水田に還元されるようになりました。
餌用のワラは以前は中国などから輸入されていたらしいですが、口蹄疫の問題で輸入ゼロに。
で、ワラを取り扱う業者が生まれたということのようです。
ピンク色の肉にまっしろな脂肪が網目のように入っている状態。
大変に美しい、まさに芸術品。素晴らしい日本の技術。しかし牛はと言えば
ビタミン欠乏のため、出荷前にはほとんどがトリ目状態。
ひどいものは目が見えなくなってる牛もいます。
3歳の失明寸前の女の子の牛たち。彼女たちは屠畜され、
「うわあ~! お箸でお肉が切れちゃう~」という最高級の肉になり、
レストランでサーロイン一枚15,000円とかで売られるのでした。
ほんたべセンサーがレベル3反応になるのも、当然のことなのでした。
出荷を目指して入念に作り上げられた芸術品とも言える肉質。
この、メタボでビタミン欠乏の死ぬ寸前の牛が、
3カ月出荷できないとどうなるか。
ひょっとしたら、餌を変えて牛が元気になっちゃうかもしれません。
脂肪の色はまた黄色くなり、サシの入り具合もおそらく変わります。
それで大塚副大臣は「消費者の理解を求めたい」と言ったのでした。
えええ~? そういう問題なのぅ~?

宮城県産ワラが島根まで行ってるという報道を見て、あんなにかさばって軽いものを
よく島根まで…運賃の方が高いじゃん!と思ったのですが、それだけお金をかけても、
和牛は割が合うってことでしょう。価格暴落のショックはかなり大きいはず。お気の毒です。
3カ月間、タダ飯食らいの牛を置いとくことはまだいいとしても、
(飼料代の援助のために、5万円のつなぎ資金の補助がされたようですが)
何よりも、出荷した牛のランクが下がることが大問題。
一頭70万位で購入した子牛を、A5ランク目指して手間かけて面倒見て、
最高の状態に仕上げたのに、タダ飯食べさせる3カ月の間に肉質が下がり、
A2とかになっちゃったりしたら、赤字になってしまうわけです。
さらに風評被害で相場も下がりますから、まさに踏んだり蹴ったり。
農家の苦労を思えば、黒毛を食べて支援したいと
多少は思わないでもないわたくしです。
でもさあ、ひとつだけ言いたい。そもそも、その飼い方ってどうなのよ。
まあ、でも、この事実を知っていても、一年に一度位、
黒毛のおいしいのを食べたいなあと思ったりしますから、
人間の欲とは恐ろしいものですなあ。
しかし、食べるたびにセンサーレベル3が稼働するんじゃ、
セシウム以前に黒毛はちょっともうムリかなあ…って感じでもございます。
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