農薬と、農家と、ミツバチのこと

開花とともに農薬散布本番になる桃栽培。こわ~い花腐病・灰星病、
せん孔細菌病対策でこの時期は殺菌剤が主。葉っぱが出てきたら殺虫剤。
ってな感じです。写真撮影・市川泰仙氏
今年の山梨県の桃の防除暦を見て「おおっ」と思ったわたくし。
有機リン、カーバメイト系の大変よく効く毒性の強い農薬が外され、
殺菌剤もへえ~と思う程度のものになってたのだ。
(まあ、ダーズバン入ってるけど)
すごいじゃん、山梨県! どうしたのかしら。
安全性に配慮してるのかしらんとか思ったわたくし。
でもこの事実、消費者に伝わることはないのよね。
「農薬」をひとくくりにして「悪」というのはたやすいが、
農薬にも安全性・毒性、いろいろとあることはあまり知られていない。
紫外線で分解されて毒性がなくなり、
雨が降ったら流れちゃうBT剤(有機許容農薬)と、
「あの、これ、ほんとにヤバイですよね。人、死にますよね」という
有機リン・カーバメイト系の農薬を同列に論じてはいけないんだが、
皆ごっちゃにして話している。

んで、袋かけ前にダーズバン。シンクイムシ・ハモグリガ・ダニなどに。
どっちにしろそこにいる虫は皆死んじゃう有機リン系農薬だから、
一度このあたりで入れといて、害虫密度を減らしとくってことでしょうね。
雨が降らず曇りが続くお天気を狙い、満を持してまいたBT剤が、
予報になかった雨のせいで無駄になったりすると、
まいた農家は悪態の一つもつきたくなるだろうなと思うのだ。
高く売れない有機野菜に高い農薬を使って無駄になるとは。
腹が立つでしょう。わたくし、この愚痴を延々聞かされたことがあり
「うんうん、そーでしょーとも」とひたすらあいづちを打つしかなかった。
農薬の毒性にピンからキリまであることを消費者はほとんど知らない。
「農薬=悪」だけど、多くっても5回ぐらいしか使われていないと
消費者は信じている。それぐらいなら我慢できるよねと。
有機許容農薬の5回と、有機リンの5回とでは、
ぜんっぜん違うのだが、そんなことは誰も知らない。
さてしかし、ここ数年の話だが、EUでは「やばいですよね」という
毒性の強い農薬の安全評価の見直しが進んでいるらしい。

このぐらいの大きさになってくるとBT剤はあんまり効きません。
もっとちっちゃい頃にまかないとダメなのですね~。タイミングが大事。
お天気・虫の発生状況・その他もろもろ。ああ、大変だ。
1200品目あった使える農薬を、300品目に減らそうとしている。
EUの評価軸は「環境に悪影響を与える」というもので(いかにもヨーロッパ的)、
使えなくなる農薬は、おそらく有機リン・カーバメイト系だ。
(殺菌剤も相当あると思うけど)
有機リン系農薬の具体名はDDVP、スミチオン、ダーズバン、
トクチオン、マリックス、マラソンなど(名前が「むひ~っ」て感じよね)。
カーバメイト系はデナポン、ミクロデナポン、ランネート(!!!)など。
ホームセンターに行くとわりと平気で売ってる農薬だ。
アメリカでは人・家畜に対する毒性の見直しが行われており、
やはり有機リン・カーバメイト系がそのターゲットになっている。
これらの農薬が規制されるとアメリカの大手農薬メーカーが作らなくなるから、
結果的に日本でも作られなくなり、そのうち失効してしまう。
しかし海外での規制がないと、日本で規制されることはほとんどない。
日本では、環境・人畜への影響をとくに評価していないからだ。

ラウンドアップを毒性だけで見た場合、もっと毒性の高い除草剤と比較すると、
有機リンとネオニコチノイド農薬位の差があるらしい。知りませんでした。
だから「安心な除草剤」とJAの人が言うのでしょうね。
日本の場合は、農薬関係の法律は農薬取締法で、
残留農薬については食品衛生法で定められているが、
どちらも、消費者への影響しか考えられていないように見える。
散布する農家に対する安全の指針はどこにもない。
気になって見てみたら、防除暦の表紙裏にちょびっとだけ書いてあった。
要約すると「肉体的に万全の備えをし、合羽・マスクなど防護具をつけて、
朝夕の涼しいときに風向きを考え農薬を浴びないようにまきましょう。
散布が終わったらお風呂に入っていつもの衣類とは別に洗濯しましょう」
アメリカには、農薬散布時の安全性のための法律があるらしいが
(散布後何時間は畑に入るなとか)、日本では上記の注意書きのみ。
農水省も厚生労働省も消費者庁も、消費者しか見ていないのだった。
農家の安全はどうでもいいのかな~。ふと疑問がわくわたくし。

ミツバチが夏場の稲に散布するカメムシ対策の農薬で死ぬことがあります。
これはネオニコの「薬害」。蜂類崩壊症候群(CCD)とはちょっと違う。でも、
ごっちゃにして話す人がいるから要注意です。カメムシ対策は消費者が
虫害の米を嫌がるため、せざるを得ない。これも消費者は知る必要があります。
最近よく聞く「ネオニコチノイド系農薬に規制を!」と言ってる人々は、
この話を知っているのだろうかといつも思う。
有機リン・カーバメイト系農薬は、ミツバチどころかそこにいる虫を全部殺す。
人間にだって危険だ。農薬はすべて危険なものだが、危険度が違う。
ネオニコはこれらの農薬の代替物として開発された農薬で、
有機リン・カーバメイト系農薬が規制されたら、
これが主流の殺虫剤になるだろうという農薬だ。
確かにイミダクロプリドとクロチアニジンの2剤については、
ミツバチに悪影響があると言われ、フランスでは制限されてるが、
それ以前に有機リン他を制限してるのよね。EUでは。
ミツバチよりも、農薬をまく人間のことを先に考えるべきなのでは。
なぜ農薬をまかなくてはならないのか、考えることが先なのでは。
なんてことを思うわたくしはおかしいんでしょうかしら?
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