土用だし。うなぎの話

うなぎから川魚のニオイを取ったら穴子になると思うんだが、
と言ってみたら、夫ちゃんにマジで違うと言われた。なんか違うらしい。
穴子は好きなんだけどな~。いいじゃん、穴子で。
幼いころ我が家では、年に一度だけうなぎが食卓にのぼった。
鳥取生まれのわたくしの家族は全員、
日本海の荒波にもまれたサバとかイワシ、イカ、カレイなどを
日常的に食べており、川魚は全く食べなかった。
というか、川魚は嫌いであった。とくに父が。
しかしなぜか毎年、土用になると唐突にうなぎが出てくる。
家族のだれ一人、うなぎが好きじゃないのに
母は毎年おまじないのように土用にうな丼を作っていた。
大人になって自分で食材を買うようになったら、
ますますうなぎと縁遠くなった。
一生食べなくてもいいと思っていたら、
どういうわけか、うなぎが大好きな男と結婚した。
彼はうなぎを食べない女と結婚したせいで、
多いときで年に2~3度しかうなぎを食べられない。
そもそも好きじゃないから買うことに気づかない。
夏になり、彼が「うなぎ~、うなぎうなぎうなぎ~!!」と叫び出すと、
「おお、そういう魚もいたじゃないか」と思う。んでしぶしぶ買う。
そうしたら、最近うなぎが高いらしい。
ニホンウナギは知らない間に絶滅危惧種になっており、
メディアでは代用品やら何やらでかまびすしい。
わたくし的には全く痛痒を感じない。食べなくても平気だ。
わたくしは、うなぎが嫌いな安上がりな女である。
さて、なぜニホンウナギが高いのか。それは完全養殖ができないからだ。
最初に「養殖できない理由」を知ったのは1998年ごろだ。
稚魚が何を食べているのかわからないから養殖できないと
某D社と取引があった静岡の漁協の人に聞いたのだ。
太平洋のどこかで卵から孵ったニホンウナギの稚魚は、
暖流に乗って日本に来る。
寒流にはプランクトンがたくさんいるが、暖流にはいない。
彼らは共食いをしているのではないかと思われているという話だった。
共食いするんじゃ大変だよなあ。うなぎ、さすがにワイルドだぜえ。
次に聞いたのは2007年ごろのことであった。
ニホンウナギはマリアナ海溝のあたりで産卵しており、
その後、稚魚をつかまえて食べているものを調べたら
稚魚はある種のホヤの排泄物を食べているらしいことがわかった。
ホヤの排泄物。どんなものなのか不明だ。
その後調査が進んでいるのかどうかも不明だ。
最近、ニホンウナギの養殖が成功しそう的な報道を何度か見たが、
だいたいそれっきりなので、やはり難しいのであろう。
水産業界の方々にはがんばっていただきたいものである。
いずれにしても、日本の川で収獲され高値で取引される稚魚は、
大変な苦労をしてマリアナ海溝くんだりから日本に来ているのだ。
すげえなあ、ニホンウナギ。そんな苦労をして遡上するときに
がっつり捕まるのだから、稚魚にはいい迷惑である。
さて、収獲後は養殖だ。うなぎの養殖にはイヤな話がたくさんある。
密飼いで病気が発生しやすいため抗生物質が餌に添加されてるとか、
生きた魚ではない何かの飼料を食べてるのでおいしくないとか、
急激に生育しているため肉がぐずぐずで柔らかいとか、そういう話だ。
某D社で扱っていたうなぎは、抗生物質は添加しておらず、
四万十川のきれいな伏流水を使い、池に炭を埋め込んであり、
タレも伝統的な調味料を使ってあるので当然だが高かった。
10年くらい前に1尾1,300円くらいした。去年は1,900円ほどだったかな。
そうしたら今年は注文書から消えてしまった。おいしかったのになあ。
わたくしは某D社のうなぎだけは食べることができたのだ。
しかし今やスーパーのうなぎがそれぐらいするのだから驚きだ。
うなぎはチョー高級魚になってしまったらしい。
いつの日か、うなぎは特別な日のごちそうになる。
わたくしの家族のように、日本国民全員が土用にだけ、
おまじないでうなぎを食べるようになる日は近いかもしれない。
追記・うなぎの完全養殖9割成功という記事が7/24の産経新聞に出てました。
これで絶滅危惧種から外れるといいですね。
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