知ってるようで知らない海苔の話 その1

夕暮れの海は美しくて寒さを忘れるほどでございましたが、
この後深々と冷えてきましたよ。いや、寒かったです。そんななか
水をじゃぶじゃぶ浴びてる海苔漁師は大変だよなあと思ったです。
おにぎり、海苔巻き、寿司。
わたくしたち日本人にとってあたりまえの食材。それが海苔である。
しかし海苔がどのように作られているか、知ってる人はいるかな?
わたくしは知らない。
海苔にもおいしいものとそうでないものがあるが、
その理由を知ってる人はいるかな? わたくしは知らない。
ということで、福岡に海苔の取材に行ってきた。
海苔の養殖は、有明海、瀬戸内海、伊勢湾、東京湾、松島湾で行われている。
大きな川があるところがいいようだ。これ、川からミネラル分が注ぐからよね。
森付き魚とか魚付き森とか言われるが、こういう海は栄養分が豊富で、
いいものができるのであろう。牡蠣の養殖も同じである。
だから佐賀県では諫早干拓事業で海が閉じられ困っているのだ。
有明海では主に支柱方式という、海苔網が支柱に固定され、
潮の干満によって海苔網が海面から出たり海中に入ったりする方法で養殖されている。
その他の地域では海苔が常に海面下にある浮き流し方式が取られている。

出港! 波を切ってびゅんびゅん走るぞ! そして海水かぶりまくり。
出港時間は17:45位だったかな? 西日本は明るいねえ。

10分ほど走って、最初の摘み取り場所に到着。
海苔の摘み取りはこのボートで行います。真ん中の銀色のものは刈り取り機。
なんか風呂桶みたいだなーとちょびっと思ったわたくし。

海苔の網の下をくぐって新しく伸びた海苔の芽を摘んでいきます。
今回は冬芽の2番摘み。秋芽に続いて冬芽の2番摘みまでは品質が良く、
入札価格もいいらしい。時間が経つと海苔の葉がだんだん硬くなるんだって。
海苔の人工養殖は海苔の繁殖方法がわかった昭和30年以降に始まった。
イギリス人の研究者、ドゥルー・ベイカー女史が偶然発見するまで、
海苔がどのように繁殖しているか誰も知らなかったのだ。
面白いなあ。しかも、海苔は雌雄同体なのだった。
春先に受精した海苔は、胞子を作作り、その胞子はカキの殻に取り付く。
そこでじゅうぶんに成長してから海中に放出される。
現在は海苔の胞子を海苔漁師や漁協が人工的に栽培し、効率化が図られている。
これ以前は、海中の胞子を取り込む自然養殖が行われていた。
うなぎの稚魚を採取するのと同じである。
日本における海苔生産量は佐賀県がTOPで、その次が福岡県だ。
有明海で養殖されている海苔は品質が良く高値で取引されているらしい。
これは支柱方式という養殖法と、有明海の状態によるものだ。
支柱方式で養殖すると、一日のうちの数時間海苔が太陽光線にさらされ、
海苔が乾かされ、光合成が活発に行われる。この時殺菌もされる。
海中に入り、夜の間海苔は生育する。
この繰り返しが、柔らかく味のいいものを作ると考えられている。

2網分の海苔を収穫して帰ってきた小舟。いっぱいに海苔が入っとります。

海苔をポンプで吸い上げて船の保管庫に移します。海水をじゃんじゃんかけて、
海苔をきれいにポンプに集めます。人、濡れ放題。

ポンプで吸い上げる際に海水と海苔をちゃんと分離しているのよね。
この海苔を食べてみたけど「へー」って感じの味。磯臭いし。
香ばしさもとくになくて、これを加工することを思いついた日本人ってエライなあ。

分離された海水は海に戻しております。これ、以前は手作業だったんだよね。
どんだけ寒いか、体力使うか、大変か。想像したら頭がくらくらしちゃいましたよ。
高級品だったのは当然よね、海苔。徐々に機械化が進んで良かったなあ。
さて、以前は高級品だった海苔だが、海苔養殖の技術が進み、
機械化などの効率化が図られたおかげで、
昭和50年代をピークにして海苔一枚あたりの単価は下がり続けている。
しかし、どういうわけか、ご家庭での海苔消費量も右下がりになっており、
上がっているのは業務用だ。主にコンビニと外食である。
ってことで、コンビニのおにぎりがどれぐらい海苔を使ってるか調べてみた。
2012年度のセブン-イレブンの年間のおにぎり販売個数は16億8千222万個らしい。
おにぎりの海苔の大きさは半帖なので、2で割ると8億4千111万枚である。
ローソンは6億個。ってことは3億枚。
平成20年の数字しか見つけられないが、海苔生産量は91億枚であった。
セブン-イレブンとローソンだけで15%の海苔を使っているのだった。
すごいなあコンビニ。日本人、1人でコンビニおにぎりを10何個食べてる計算だ。
単純に感動である。
さて、海苔養殖の一年はどんなふうになっているのかな?

海苔を全部移したら再度海苔摘みに出発。海苔の生育によって、
収穫できる網を全部回るみたい。この時期は毎日収穫している。さむー。

支柱の間を網を持ち上げながら移動するのはこんな感じ。
日が沈んだら真っ暗っす。

見学させていただいた漁師さんが育成している海苔の胞子。
この地区では胞子を自分で育成している漁師さんが多いらしい。
それはなんとなく楽しい気がするなあ。自分好みの性質の海苔を作ってるのかも。
海苔の養殖は9月にスタートして4月で終了だ。
9月、海苔漁師は海に養殖用のサオを刺しに行く。
有明海の場合でこのサオの長さは6mから12mまで。
海の底に2mほど刺すらしいが、これは人力だ。
船の上から海中にサオを刺すなんてさあ、大変だよね。
2013年は、海苔の種付けの解禁が10月19日だった。
ここで海苔の胞子が海苔の養殖網に付けられる。
一部を海に残し、残りは網ごと冷凍保存される。
海苔の生育は早くて、種付けから1か月後には収穫が始まる。
2013年の初摘は11月14日である。
これが秋芽一番摘みという、海苔の中で一番品質がよくて高級で、
おいしいと言われるものだ。なんとなく新茶みたいだね。
この網は12月20日に撤収されたらしい。次の海苔網を張るまでちょっと休憩し、
冷凍してあった網を12月27日に再び張り、冬芽が収穫される。
冷凍網のほうが生育が早くて、1月7日には一番摘みが始まっている。
この後3月頃まで何回か網を変えて、その都度収穫だ。
海が暖かくなってくるとプランクトンや病気が発生するので、
寒い間しか海苔の養殖はできないのだった。

港に戻ってきたら、船からポンプで加工場まで吸い上げます。
よその漁師さんはコンテナに入れてトラックで運んでたから、皆がそうではないらしい。
船の清掃や後片付けで、彼が加工場に戻るにはまた30分くらいかかります。

とっぷりと日が暮れて大変美しい月が海面を照らしていました。
とても幻想的な風景で、ぼんやり見てたらからだの芯から冷えました。冷えた分、
海苔は大切に大切に食べないとなあとつくづく思いましたよ。
収穫された海苔はその日のうちに加工である。
撹拌→裁断→水洗→脱水→水洗→整形→乾燥という工程を経て、
10枚つづりの乾海苔の完成。それを10束にして結束されてできあがり。
この後、格付→入札となり、加工業者のもとで焼かれて商品になる。
この加工と格付けのあたりにも、美味しい海苔の秘密が隠されている。
んで、長くなったので続きは次回に。
参考資料
WEBサイト・セブン-イレブン、ローソン、白子のり、
一般財団法人 海苔増殖振興会、全国海苔貝類漁業協同組合
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