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木桶仕込みの醤油がおいしい理由をお醤油屋さんに聞いてみた

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Byほんたべ

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大正屋醤油さんの杉樽仕込み醤油。杉樽は今はもうつくる人がいないので、
廃業したお醤油メーカーやらいろんなところから引き取っています。
つーことで全部サイズが違うそう。

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醤油蔵って暗くて汚いイメージがあったけど、作業性を考えて
お醤油樽の上に床を張ってあります。空気を入れて撹拌するときは
醤油が吹き上がらないよう蓋をしてるそう。蔵が汚いのがイヤという
山本専務のアイディアだそう。すげーきれいで清潔な蔵でした。



今年『クロワッサン』という雑誌で「わたくしの好きなおいしいもの」
的な特集に参加させていただき、好きな食材をあれこれご紹介し、
自分の偏りを強く実感したわたくしです。

このときにご一緒した料理研究家の方が
「お醤油は杉樽仕込みじゃないとダメ!」と非常に熱く語られまして、
わたくしとしてはその理由が知りたかったのですが、
そこんとこはあんまりよくわかりませんでした。

昨今酒でも酢でも木桶や木樽を利用しているところは少なくて
FRP(強化プラスチック)やステンレスタンクを利用してたりして
そもそも杉樽自体を製造できる人がいなくなった、という事情もあり、
そこに固執してもなーなんて思っていたのですが、
料理のプロである料理研究家が熱く語るのだから何かが違うのでしょう。

んじゃ何が違うの? すげー知りたい!!

しかし、ネットを見ても伝統的な製造法とか昔ながらのどうとか的な
情緒的な理由しか見当たらないのでうっかり失念しておりました。

そしたら先日。

安来市の大正屋醤油さんの蔵を見せていただく機会がありまして、
大正屋醤油さんは杉樽で醤油をつくっていらっさったのです。
ひゃっほう! これはすんばらしい!!
短い時間でしたが専務の山本周作さんにあれこれ教えていただきました。

日本における醤油は日本農林規格で以下のように定められております。
https://www.soysauce.or.jp/gijutsu/pdf/kikaku_33.pdf
一般財団法人日本醤油技術センターのサイトのほうがわかりやすいかも。
https://www.soysauce.or.jp/gijutsu/jas/top.html

JASマークを添付しないでも醤油は売れます。つーことで、
日本には日本農林規格を満たしていない醤油も存在しています。

JAS規格では入れてもいい食品添加物なども詳しく決まっておりますが、
そもそも醤油と言えるもの、の定義が非常に広くてこんな感じです。

『「1 大豆(脱脂加工大豆を含む。以下同じ。)若しくは大豆及び麦、
米等の穀類(これに小麦グルテンを加えたものを含む。)を蒸煮その他の方法で
処理して、こうじ菌を培養したもの(以下「しょうゆこうじ」という。)
又はしょうゆこうじに米を蒸し、若しくは膨化したもの若しくはこれをこうじ菌により
糖化したものを加えたものに食塩水又は生揚げを加えたもの(以下「もろみ」という。)
を発酵させ、及び熟成させて得られた清澄な液体調味料(製造工程において
セルラーゼ等の酵素(たん白質分解酵素にあっては、しろしょうゆの
たん白質を主成分とする物質による混濁を防止する目的で生揚げの加熱処理時に
使用されるものに限る。)を補助的に使用したものを含む。
以下「本醸造方式によるもの」という。)』
(日本農林規格より抜粋)

このほかに2、3と続きますがその内容もちょっとびっくりします。
醤油とは大変幅広いものなのだな、ということがわかります。

官能検査とか成分分析などが行われ規格を満たしたものに
JASマークを添付して販売することが可能になります。

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上の写真の樽を横から見たところ。なるほどーって感じ。
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お醤油をしぼったあとの杉樽(一回洗浄)。次回仕込むときにまた洗う
ってことですが、菌というか、なんかたくさんついてます。
この樽が醤油をつくるってことなんでしょうなあ。いや不思議だわ。



昨今では、丸大豆醤油の評価が高いためか、
大手メーカーでも丸大豆醤油を製造しているようですが、
脱脂加工大豆が原料の醤油も相変わらず売られています。

脱脂加工大豆を使用すると何が違うのか聞いてみたところ、
完成品の窒素含有量が多いのだそうです。
窒素量が多いと窒素が適正な分量になるまで水で薄めることが可能です。

水で薄めると味が薄くなりますから、アミノ酸を入れ、
その他JAS規格でOKとされている食品添加物などで味付けすれば
安価な原料で安価なお醤油ができる。つーことのようです。

脱脂加工大豆は油を搾ったあとの大豆のことですから、
油脂原料の副産物の有効活用=エコとも言えます。ただまあ、
醤油の香りとかうまみとかはちょっとどうかなって感じでしょう。

わたくしの故郷、というか西日本には刺身専用の刺身醤油や、
砂糖とかステビアとかが添加されているあまーい醤油、言ってみれば、
地域に密着したむかーしから使われている醤油が存在します。

東京で丸大豆醤油に慣れてしまったわたくしにはこれが非常につらく、
せっかくの白身魚の刺身をだいなしにする醤油としか思えませんが、
地域の人々はこれでなくては、とおっしゃるのです。

地方の醤油蔵ではこういった醤油もつくり続ける必要があります。
この醤油でないとダメ! という方が一定量いらっしゃり、
その方たちが地域のお醤油メーカーを支えているからです。

なるほど。丸大豆がいいってわけでもないのだな。っつか
こないだ熊本で東京の醤油はからくてキライと言われたんだった。
醤油の味は地域の文化ってことなのでしょう。

大正屋醤油さんもこういった地域密着型醤油を仕込んでおり、
それにはFRPを使っていらっしゃるのでした。

んでは、FRPと杉樽では何が違うのか。

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醤油はもろみごとこの袋に入れてしぼります。ぎゅーっとしぼったところ。
そういや醤油粕ってなんになるんだろ。今度行ったら聞いてみよう。

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おみやげにいただいた生醤油。三年仕込みってのが再仕込み醤油。
火入れをしていない生醤油なので、香りとかチョー楽しみ。


醤油の原料は大豆と小麦と塩。これに麹菌や乳酸菌、酵母を添加し、
その発酵の作用で醤油ができあがる、というしくみは同じです。

FRPで仕込む場合、決まった菌を使う&製造工程が機械化できること
などから、安定した食味の醤油が大量に生産できます。
大手メーカーの醤油の製造期間はWEBサイトを見ると約半年らしいです。

これが杉樽だとどうなるか。

杉樽は洗浄はされていますが長年の使用で樽に菌が住み着いています。
そこに原料を入れると菌が動き始めます。蔵にもたぶん菌がいます。
大正屋醤油では最初のうちは空気を入れて撹拌することもありますが、
時間が経ってくると人力で、小さな櫂一本で撹拌します。

この櫂の入れ方や速度などで香りが変わるそうなのですが、
一日一度撹拌されつつ杉樽のなかでのんびり発酵がすすみます。
醤油ができあがるまでにかかる時間は約一年半。
再仕込み醤油などは3年もかかるそうなのでした。ひー。

さて、醤油にはさまざまな香り成分が」含まれていますが、
その成分は微生物によってつくられます。

大手メーカーの管理されたFRP容器のなかでは菌の多様性が薄くなり、
できあがる香りも画一的になってしまいます。
しかし杉樽ではそこにいるさまざまな菌のさまざまな働きにより、
生まれる香りが複雑になる、と考えられます。

わたくしたちが感じる「味」は実は「香り」によるところが大きく、
というか鼻をつまんだら味がわからなくなりますから、
わたくしたちが味だと思っているものは香りだとも言えます。
そのため、香り豊かな醤油ほどおいしく感じるのです。

つまり、杉樽仕込みの醤油がおいしい理由は、
香りの多様性による、ということなのでした。

香りは撹拌の際の強弱やそのほかさまざまな要因で変わるそうなので
同じ味を安定的に生産する醤油づくりはたいへんなのではないか、
なんちて思ってしまったわたくしです。

ちなみに、醤油は塩分濃度が高いため雑菌が入るこむことがないため
杉樽をていねいに洗わなくてもいいそうですが、
酒や、酒からつくる酢は雑菌が入り込み放題であります。つーことで、
よくない菌が入ると大変だからFRPで仕込むところが多いのかも
なんちて想像したわたくしです。

いつか醤油を仕込むところとか混ぜるところとか見せてもらおうっと、
と心に誓ったわたくしでした。

大正屋醤油
醤油の原料大豆は近隣の産地のものを使用されており、
フードマイレージにも貢献されております。すげー。
http://www.taishoya.jp/


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Comments 2

エンゲル係数80でOK  

No title

香りで昔のことを思い出したので書かせてください。昔、市販の消臭剤のほとんどが他の香りも混ぜていたので、それが嫌いでよく妻と喧嘩をし、なんとかしなければと香りの入っていない消臭剤を探していたらありました。500mlで15,000円(給料の一割)でした。本当に凄くて部屋に置くだけでニオイが消えました。でも、ニオイが無くなると美味しいものもまずくなるのもわかりました。においって本当に大事だと思いました。でも美味しくなるのもありました。とくにウイスキーは、ストレートでもロックでもジュースのように飲める、とんでもなく危ないお酒になりました。今もどこかで販売されていると思うのでよければ一度お試しあれ。責任は取りませんよ!

2017/12/04 (Mon) 20:39 | EDIT | REPLY |   

ほんたべ  

Re: No title

コメントありがとうございます。

嗅覚を感じ取る部分が事故などで破壊されるとニオイがわかんなくなるらしいです。
有名なロックバンドのなんとかというところのボーカルが事故でそうなったと聞いたことがありまして、人生のヨロコビを感じ取れなくなったとかなので、ニオイってとても大事なんだろうと思います。

加齢によりニオイを感じ取れる能力もどんどんなくなるわけですが、できるだけそういうことにならないよう、常にニオイを感じとれるよう訓練しとく必要があるのかも。
タバコとか強すぎる香水とかダメだと思ってます。

家のニオイはあんまり気にならないというか、窓を開ければおひさまのにおいが入ってくるのでいいかと思ってて、消臭剤は一度も使ったことがないのです。
でも一度、からだがあったまるようにとお風呂に炭を入れてみて、アロマセラピー用のエッセンシャルオイルも入れたら、見事に香りが吸着されました。
それ以来炭はお風呂に入れていません(泣)

15,000円はすごいですねー。でもやっぱ買わないと思います。
15,000円あったら今めっちゃ欲しいレンズ(シグマ17-300mm約50,000円)の足しにします(^q^)

2017/12/05 (Tue) 11:30 | EDIT | REPLY |   

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