「赤身の牛肉の時代」で生き残れるのは

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Byほんたべ

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井信行さんの阿蘇あか牛「信行牛」。
これは赤身のうまみといい脂の甘みといいサイコーでした。
井さんによると「脂が甘いのは大豆のせいだと思いますね、うふふ」
とのこと。やっぱし飼料で牛の味は変わるってことですね。



わたくしの師匠・西出隆一さんは以前牛の肥育農家であった。

肥育農家とは子牛を買って肉にする農家のことである。
その子牛をつくるのが繁殖農家、そのほかに繁殖から肥育まで全工程をやる
繁殖・肥育一貫農家がいる。牛肉業界には農家の形態が3種類あるのだった。

なので単に「牛飼ってます」と言われてもどれかわからないので要注意だ。
っつか、別にそんなこと聞かなくてもいいか。

ともあれ西出さんは戦後、牛肉が大変とても儲かった時代に、
ホルスタインの雄牛を格安で仕入れて肥育することを思いついた。
現在ではそれは当たり前だが同時はホルの雄牛は捨てられていた。

アホみたいな値段で雄牛を買い取り肉にしていい価格で売る。
すごく儲かった西出さんは毎晩金沢で豪遊してたら牛が線路に入って
借金を背負って体を壊して能登でトマト農家になるのだが、それは置いといて。

人が思いつかないことをしてお金にする才覚がある人は
やっぱり違うよねとしみじみ自分の手を見てしまうがそれもまあいい。

ともかく、肥育農家は子牛を購入して肉をつくらなくてはならないため、
子牛の価格が重要である。つまり安いと利益が多く高いと儲からない。

さて、子牛価格はこのところ高騰しており肥育農家は悲鳴を上げている。
最近は少し落ち着いてきたらしいが、牛肉価格も上がっている。

子牛価格の高騰の発端は宮崎県で起きた口蹄疫で
種牛(雄牛)や母牛が全部死んじゃったからである。
その後東日本大震災でも同じことが起こりますます高騰した。

ちなみに子牛の価格で検索してみたら、ホルスタインのオス
(乳牛去勢子牛)価格は平成19年では約97,000円であったが、
平成28年では約209,000円で2倍以上になっているのだ。ひーー。
ちなみに肉用牛(和牛)の去勢牛は80万以上です。ひょえー。

そんななか、値段が全然つかないのがジャージー牛のオス子牛である。

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ジャージーの不妊牛44.9ヶ月齢。脂が分厚くついております。
この脂からミルクぽっいあまい香りがしました。乳牛固有のもの?
赤身のキメは細かく柔らかいけどうまみはあか牛に比べると薄い感じ。
でも安くてこのおいしさならなんの問題もないでしょう。



小型の牛・ジャージーは国土の狭い日本で土地を使わず飼える
みたいな理由でそもそもは導入されたらしい。が、広まらなかった。

フツーに穀物を食わせてとれる乳量はホルスタインで年間10,000リットル
~12,000リットル、ジャージーは7,000から8,000リットル。
乳量は少ないが味が濃いので現在では付加価値商品として販売されている。

つーことで、ジャージーのオス子牛は使いみちがないから廃棄される。
ううううう。でもしょうがないのだ。産業動物だから。

しかしこのジャージーのオス子牛を肥育することを思いついた人がいる。
それが熊本県の産山村で阿蘇あか牛の繁殖・肥育一貫経営を営む井信行さんである。

井さんはなんと国産飼料(牧草も穀物も)100%であか牛を肥育しており
その肉のおいしさから「信行牛」というブランドになっているほどだが、
年間24頭しか出荷しないので一般人には入手できない。

ちなみに阿蘇のあか牛は褐毛和種という和牛の一種で赤身の肉が特徴である。
阿蘇の草千里とかで放牧されてるのを見るが、あれは繁殖用のあか牛のメスと子牛で
肥育されてる牛はずーっと牛舎にいるから誤解しないように。

井さんの阿蘇あか牛はかなりいい値段で取引されているが、
井さんはもう少し安い価格で牛をつくりたいと考えた。
そこでジャージー牛のオス牛を肥育してみることにしたのだった。

牛の一般的な飼育期間は以下のようなものである。

・米国産牛 19ヶ月 オーストラリア産牛も同じくらい 
 ※豪州牛は放牧のためきちんと管理されていないらしい
・黒毛和牛(メス) 30~32か月
 ※神戸・松坂牛などの黒毛和種は34~36か月。
・黒毛去勢オス だいたい28~30か月
・黒毛以外の和牛 24ヶ月くらいのものが多い
・交雑牛(F1)25~28か月
 ※黒毛とホルスタインをかけ合わせたもの。ちょっとおいしい。
・ホルスタイン(国産牛) 18~20か月くらい。
 ※北海道では16か月くらいの短期間で出荷することもある

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信行牛のサーロイン。脂肪が黄色っぽいのがわかりますでしょうか。
これは粗飼料多給型の特徴であります。黒毛で脂肪が黄色いと
価値が下がるのでビタミンを欠乏気味に飼育します。


肉の味は飼育期間による、というか、長生きしているほうが味がいい。
しかしやたらと長生きさせてもエサを食うので適正期間が決まっている。

ジャージー牛は一般的なホルと同様の飼育期間だと小さいままだが、
30ヶ月齢あたりでぐわっと大きくなる。つまり長く飼えば肉の量が増えるのだ。
もともとの子牛価格が安い&粗飼料多給なのでエサ代はそんなにかからない。
誰も肥育しようとしなかったジャージー牛の可能性を井さんは発見した。

井さんは妊娠しないメス牛、不妊牛も肥育している。

不妊牛とは妊娠しないため乳が出ない=廃棄される牛のことである。
不妊牛は「いつか妊娠するかも」と何年間か種付けされるため、
井さんのところに来たときには、すでに30数月齢になっている。
オス子牛を一から育てるよりも飼料が少なくすみ、効率がいいことがわかった。

そうなるともっと肉の価格を安くすることができるかもしれないし、
これがビジネスモデルになれば地域に広めることができるかもしれない。
なにしろ阿蘇にはジャージー牧場がたくさんあるのだ。

井さんはジャージーの可能性に期待し今も数頭育てている。
これからどんどんおいしい肉になっていくだろう。たのしみなことである。

赤身の肉の時代が来ると言われて久しい。が、昨今の牛肉価格高騰で
赤身の肉が黒毛のA5と同じ価格だと買うのは厳しいし売れなくなる。

そんななか「オーガニックとか放牧とか物語がついた赤身肉」が売れている。
しかしわたくしは、どっちかというと物語よりも肉の価値はまず
「ほんとうにおいしい」ことにあるのではないかと思う。
つーことで、陰ながら井さんを応援していく所存です。

それにしても、井さんのあか牛もう一回食べたい。
とりあえず来年の夢。抱負。


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