「よく食べること」は「よく死ぬこと」

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Byほんたべ

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毎回心尽くしのお料理がコースで振る舞われるのですが、
こんなステキなお料理を毎日食べてた夫様はほんとにラッキーな人だなー
ウチでは絶対に作れないわと思いました。まる。



先日、お世話になっているシロガネーゼのマダムのおうちに遊びに行きましたら、
夫様がお亡くなりになっておりました。

ええええー知らんかったー(泣)

わたくしったら「新しい本ができたから持ってきましたー」なんちて
ノーテンキにマカロンなど手土産に訪問してしまったことを恐縮しつつ、
心尽くしのお料理をいただきながら夫様がお亡くなりになった顛末などを聞き、
思うことがあったので書いておきたいと思います。

マダムはここ数十年大地を守る会の食材を購入し、
そのほかの食材は広尾の明治屋さんで購入されております。
生産者とも仲良しなので、野菜や肉などいろいろ送られてくるものもあります。

彼女は著名な料理人の方々に師事された料理研究家で、
海外の食材に造詣が深く、有名なレストランにはことごとく通い、
手間をまったく惜しまない丁寧なお料理をなさいます。

たとえばお正月のお煮しめは全て個別に煮付けて盛り付けます。
おっさんの手料理風料理が得意なわたくしにはそのようなことはできません。
しかしその一手間がお料理の味を変える、ごった煮だと雑味が出るのだ、
とマダムはおっしゃいます。ヒイイイ―すんません。

そのマダムの手料理を夫様は何十年も食べてこられました。

11月のある日、夕食の際に夫様が「食欲がない」とおっしゃったため
マダムは翌日明治屋でマグロのトロのお刺身と大和芋を買いました。
その一週間前に健康診断をしていてとくに悪いところはなかったけど、
夫ももう年だし、病気じゃなくてもなんとなく元気がないから
栄養のあるおいしいものを食べさせよう、と考えたそうです。

夫様は一人前ぺろっと平らげ「おいしかった」と言いました。

しかし翌日。食卓についた夫様はじっとごはんを見つめ
「なにも食べたくない。食べられない」とおっしゃいました。

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岩手県の山間の村(旧山形村)の食材「凍み豆腐」。
凍み豆腐って滋味あふれる味っつか田舎くさい味なので好きじゃないけど、
これは良い出汁で煮含めてありイヤなニオイもせずおいしかった。
下ごしらえと出汁でいかに食材の味が変わるか実感したです。



二人はすぐに近所の病院に行き、レントゲン検査をしてもらいました。
そうしたら、胸水がたまっていることが判明しました。
それが胃を圧迫し食欲がない、体がだるいということなのでした。

胸水がたまるのは何かほかのところが良くないということです。
急遽入院し行なったCT検査の結果をまずマダムが呼ばれて聞きました。
「肝臓と膵臓にガンがたくさんできているが、もう手術できない。
抗がん剤で治療できるかもしれないが、しますか?」

抗がん剤はがん細胞もやっつけますが正常な細胞も殺します。
「夫は86歳だし抗がん剤は高いし苦しいばかりだからやらなくていい。
治療はしません。でも緩和ケアはしてください」

「夫様に告知はなさいますか?」と医師に聞かれたマダムは、
「夫も同じことを言うと思いますが聞いてみてください」と言いました。
医師が夫様に告知及び同様の質問をしたところマダムと同じ返事が返ってきました。

夫婦は何年も前から自分たちの死生観を共有していたのです。

夫様は入院後、坂道を転がり落ちるように容態が悪くなり、
1ヶ月半ほどでお亡くなりになりました。
入院中の病院食は「まずい」と言ってまったく手を付けず
マダムのつくったマグロの山かけごはんが最後の食事になりました。

あっぱれな死に様だったわよ、とマダムは言いました。
わたしがちゃんといい食べものを食べさせていたからよ、と。

マダムは以前わたくしに「ほんたべちゃん、人には食い扶持ってのがあるのよ」
とおっしゃいました。食い扶持とは「食べものを買うための金」という意味ですが、
マダムの解釈は「人が一生に食べる食べものの量・質」という意味でした。

きちんと与えられた量と質をクリアしていなければうまく死ねない。
残ってるぶん食べなきゃいけないのに体が悪くなると食べられない。
その結果スカッと死ねず病院でぐずぐずになる。
そのへんのどうでもいいものではなくちゃんとしたものを食べること。
その積み重ねがいい死につながるのだ、とマダムは言うのでした。

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「明治屋さんに行ったらね、鯛のいいのがあったのよー。
だから春らしく昆布締めにしてみたの。大地のアボカドも高いけど
ほんたべちゃんが来るってんで買ってみたわ。おいしいでしょう?」だって。
アボカドっつか鯛が素晴らしくおいしかったです。



わたくしたちは、自分が食べたものを原料にしてからだをつくっています。
若いうちは何もかもが通常に機能しているため気にしないでもいいのですが、
わたくしたちの肉体や脳は40歳くらいから老化が始まります。

老化に伴い、細胞のコピー・修復能力が衰えてきます。
がん細胞ができる都度、やっつけてくれた免疫もダメになってきます。

この能力をできるだけ維持するにはいい原材料を常にからだに供給すること、
つまり、きちんとした食べものを食べることしかありません。

マダムの夫様のがんにまったく痛みがなかったことや、
11月のある日まで日常生活には支障なく元気だったことなどは
日々食べていたもの、つまりマダムの手料理のおかげだったのだろう、
と、わたくしは思うわけです。

さらにわたくしが感銘を受けたのは夫婦間で死生観を共有していたことでした。

人は死について考えるのを嫌がります。死についての話は、
年を取り、死を身近に感じるようになればなるほど禁忌になります。
そんななかで死生観を常日頃話し合い共有することがいかに大切か。

連れ合いががんになり、取り乱して右往左往してしまう人が多いなか
また日頃縁の薄い人たちが飛んできてあーだこーだ言うことが多いなか、
冷静に今後のことを二人で判断しそのとおりにしたことにわたくしは驚きました。

お二人とも80歳を超えているため、若い人のがんと状況は違いますが
昨今の医療費高騰国民皆保険崩壊の危機などを懸念しているわたくしとしては
このようなことはある年齢になればしておくべきだと思うわけであります。

死について話すのはむずかしいけど、50過ぎたら話したほうがいいし、
また、50を過ぎたら日々のごはんは加工度の高いスーパーのお惣菜や
某M社のハンバーガーを常食、などではなく、野菜や魚を自分で料理し
ちゃんとしたものを食べたほうがいいでしょう。

すなわち、質のいい原材料を自らに供給することです。

ちなみに医師が憂う医療費等の問題を知るには以下がおすすめです。
ルーピー鳩山氏の悪口が再三出て来るのも笑えます。
『医者の逆説』(里見清一著)


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Comments 6

H2  

羨ましい最期

羨ましい最期ですね。ピンピンコロリがいいとは言いますが、実際に突然だと準備や対応が大変で、本人も家族も準備する時間が多少あるのは最善と思います。高齢者と永く一緒に生活した経験があったり、田舎だとご近所の高齢者と関わることも多く、死も特別なものではないですが、死から遠い生活をしている人だと歳とっても気構えができない人が案外多いかもしれないですね。

自炊していても塩や砂糖の多い生活をしていたらあかんでしょうが、その辺もしっかりされていたのでしょうね。マメでもその辺がダメな場合も多いでしょうし。しかし80代でしっかり料理ができるとは素晴らしいです。

一つ気になったのは、「その一週間前に健康診断をしていてとくに悪いところはなかった」という部分です。健康診断といっても内容はピンキリですし、高齢でそれほど高度な健康診断をしてもしょうがないとは思いますけど、一体何を見ているのだろうと。ちなみに標準的な人間ドックでも、メジャーな病気で引っかからないものもあるそうで。せめてスクリーニングはしっかりカバーして欲しいところです。

自分は死の話は親とも実家のご近所さんともよくしてますよ。過疎の田舎は集落自体も死に向かっていて、単に親の介護だけでなく、地域のことにこの先どう対応していくかもいろいろ考えなきゃいけないです。

2018/02/14 (Wed) 20:57 | EDIT | REPLY |   

ほんたべ  

Re: 羨ましい最期

H2さん、こんにちは。


> 羨ましい最期ですね。ピンピンコロリがいいとは言いますが、実際に突然だと準備や対応が大変で、本人も家族も準備する時間が多少あるのは最善と思います。


突然死はいろいろと大変ですよね。
大切な書類がどこにあるとか全然わかんなかったりするし。
なので「エンディングノート」を両親に送りました。
常日頃からそういうこと考えといてね、ってことで。

あと自分も持ってるけどまだ書いていません。
書かなくちゃ。



>
> 自炊していても塩や砂糖の多い生活をしていたらあかんでしょうが、その辺もしっかりされていたのでしょうね。マメでもその辺がダメな場合も多いでしょうし。しかし80代でしっかり料理ができるとは素晴らしいです。


おいしいものを食べるのが好きな方ですから。
やっぱ食いしん坊は自分で料理すると思います。

昼にスーパーに行くと、一人分のお惣菜を買っているお年寄りがほんとうに多いのですが、
一人分つくるのがめんどうくさいんだろうな、とは思いつつ。
とくに男性一人だと大変そうです。

>
> 一つ気になったのは、「その一週間前に健康診断をしていてとくに悪いところはなかった」という部分です。


区の健康診断だと思うので、たいしたことはわかんないんでしょうね。
とくに膵臓がんって発見しづらいそうです。
わたしの祖父も手術をするってんで精密検査をした一週間後に、手術できないレベルの肝臓がんが見つかりました。
人間ドックで偶然見つかった、なんてこともあるみたいですが、体調が悪くなるまで見つからないのかもしれませんねー。

>
> 自分は死の話は親とも実家のご近所さんともよくしてますよ。過疎の田舎は集落自体も死に向かっていて、単に親の介護だけでなく、地域のことにこの先どう対応していくかもいろいろ考えなきゃいけないです。


ですよね。
これから自分が健康でいることは自分だけのためではなくて、実は子ども世代・孫世代のためにもなる、
ってなことを年を取ったら考えなきゃいけないと思います。

これから人口が減るのですから、元気な年寄りが地域や経済に貢献していかなくてはならないのです。
貢献できなくても、医療費をあまり使わない元気な年寄りでいることが大切だと思っています。


2018/02/15 (Thu) 09:34 | EDIT | REPLY |   

H2  

認知機能の低下

>一人分つくるのがめんどうくさいんだろうな、とは思いつつ。

単にめんどくさいということだけでなく、認知機能が衰えると、段取り的なことができなくなってくるんですよ。カゴに食べきれないくらい入れてる高齢者も時々見かけますが、あれも消費の段取りができず、食べたいという欲が直接的に現れたものと思います。

>区の健康診断だと思うので、たいしたことはわかんないんでしょうね。

確か一番シンプルな健康診断だと血液検査はないですよね。血液検査も項目次第ですが、今は結構いろいろ掴めるようです。胃がん検診もABC検診という血液検査でスクリーニングできますが、X線検査技師の仕事が減るとかの抵抗で導入がゆっくりです。

>貢献できなくても、医療費をあまり使わない元気な年寄りでいることが大切だと思っています。

高齢者の医療費は、認知機能低下とも大きく関わっていると思います。処方されて飲まない薬がたくさんあっても、中断してもらうことを自分で伝えられず、診療自体も必要性の判断ができずに習慣として続けて行ってるだけだったり。反対に面倒で行かなくなる人もいますけど。さほど高齢でなくても家族が対応しないとダメですね。

頭も体もピークは20代で、それ以降経験でカバーできる部分はあれど、認知機能自体は少しずつ低下しています。それが支障となる事柄も、いま世間で認識されているよりずっと早くから起きているのでは。医学では原因の方に意識が向いてるでしょうが、認知機能低下の影響は原因に関わらず身近な人にとっては重大ですね(寝ぼけてたり酔っ払ってたり疲労してても認知機能は一時的に低下しています)。頑固になったり、激情的になったり、新しいことが身につかなくなったり、元の性格や身につけた能力や経験とも大きく関係しますが、意識して観察すると結構早くからあると感じます。そういうことも踏まえた上で、高齢者への対応とか、各々での準備とかしていかないとなぁと思います。

2018/02/16 (Fri) 21:06 | EDIT | REPLY |   

ほんたべ  

Re: 認知機能の低下

H2さん、こんにちは。


> 頭も体もピークは20代で、それ以降経験でカバーできる部分はあれど、認知機能自体は少しずつ低下しています。それが支障となる事柄も、いま世間で認識されているよりずっと早くから起きているのでは。医学では原因の方に意識が向いてるでしょうが、認知機能低下の影響は原因に関わらず身近な人にとっては重大ですね(寝ぼけてたり酔っ払ってたり疲労してても認知機能は一時的に低下しています)。頑固になったり、激情的になったり、新しいことが身につかなくなったり、元の性格や身につけた能力や経験とも大きく関係しますが、意識して観察すると結構早くからあると感じます。そういうことも踏まえた上で、高齢者への対応とか、各々での準備とかしていかないとなぁと思います。


50歳過ぎたあたりでけっこうグッと来ましたが、55歳くらいでもう一段階下がる感じですねー。

老化自体は35くらいから始まってるのでしょうが、40代後半に顕著になってきます。
きっかけは老眼、女性の場合は更年期って感じでしょうか。
更年期に入ると女性ホルモンの保護がもらえなくなり、ありとあらゆることが不調になります。

大酒を飲むと認知機能が低下しますが、そもそもその大酒を飲めなくなりました。
からだがゆっくりと「無理しないモード」になりつつあります。

しかし、そういう自覚がないままガックシくる人も多いのではないかと思いますねー。
男性の場合は退職とともにめっきり老ける的なことがあるようですが、
やっぱなにがしか緊張感があるのかも。あるいは「ハリ」がなくなってぐったりくるのかも。

まあ、とりあえずいい原材料を食べておくにこしたことはないと思います。

2018/02/20 (Tue) 16:25 | EDIT | REPLY |   

H2  

ポックリ食品

少し横道に逸れますが、認知症がひどくなって長生きしたくない(ほどほどなうちに死にたい)、という意識の人が増えてきたかと思います。そこで軽い毒を持つ食品の研究って求められるようにも思うんですよね。毒となるアルカロイドなどを持つ植物は多いわけですが、普通に美味しく、食べ続けると、じわじわと不具合が出てくるのでなく、元気なままぽっくり逝く可能性が高まるような何か、ってないのかなと。短期間で効きすぎると毒や麻薬として否定的に捉えられるでしょうし、何十年では意味がない。1〜数年で効くくらいならちょうどいいように思います。だんだんボケてきて、自分でそろそろもういいかなと思ったら毎日食べ続ける、そしたらある日ぽっくり逝ける、みたいな。

2018/02/20 (Tue) 22:39 | EDIT | REPLY |   

ほんたべ  

Re: ポックリ食品

H2さん、こんにちは。
確定申告でテンパってて遅レスすんません。

> 少し横道に逸れますが、認知症がひどくなって長生きしたくない(ほどほどなうちに死にたい)、という意識の人が増えてきたかと思います。そこで軽い毒を持つ食品の研究って求められるようにも思うんですよね。毒となるアルカロイドなどを持つ植物は多いわけですが、普通に美味しく、食べ続けると、じわじわと不具合が出てくるのでなく、元気なままぽっくり逝く可能性が高まるような何か、ってないのかなと。


いやー毒物にポックリはないような気がしますねー。
どんなものでもどこかがじわじわイカれてくるでしょうから、
それなりに剣呑な症状が出るのでは。

元気でいいもの食べて天から与えられたはずのやるべきことをやり切れば
ある日ポックリいけるのではないかと信じています。

2018/02/23 (Fri) 12:11 | EDIT | REPLY |   

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