FC2ブログ

スーパーの葱から考える種の多様性のこと

author photo

Byほんたべ

20100621120428ebd_20180219123034805.jpg
2012年頃の埼玉県本庄市の瀬山明さんのネギ畑にて。
坊主が出たらそのままタネができるのを待って自家採種します。
しかしこのミツバチはネギ坊主の何を食べに来てるんだろう?



鳥取県の特産品に「白葱」というながーくてしろーい葱があります。

これは砂地で生育するまっしろな太い葱なのですが、
鳥取砂丘で栽培されているわけではなく主に鳥取県西部が産地です。

わたくしの父は境港の出身でまさに白葱産地の生まれだったため、
白葱の焼いたのとかが時折食卓に出ることがありましたが
わたくしはその葱臭さ及び「白葱だもんね!」という主張の激しさが苦手でした。

鳥取県、というかおおむね西日本では「葱」というと
東京で言うところのわけぎを少し太くしたものって感じです。

葱は青い(というか緑の)ところを食べるもので適度な香りがあればよく、
白いとこばかりの太い葱は、主張も激しいけど可食部も多いため、
わざわざ「白葱」と呼ぶのかもなんちて思ってました。

20代後半で東京にやって来たわたくしは、うどんの汁がまっくろなのに加えて、
上に乗っかってる葱がどう見ても小口切りの葉葱ではなく
白葱みたいな太くて硬い葱のみじん切りだったことに驚愕しました。

ええええええーなんで白葱が乗ってんの?→田舎者の脳内

さらに。スーパーにも青いひょろっとした葱はなく、
白くて太い葱(自分的には白葱)しか売っていないのです。ヒイイイイイー(゚∀゚)
葱臭くて主張が激しい東京の葱、絶対食べん!! 
そう心に決めたわたくしはその後10年葱を買いませんでした。

しかしあるときからわたくしは葱を食べられるようになりました。
それは葱の産地担当になり、その葱がおいしかったからであります。

さて、スーパーに売ってる葱はいわゆる「一本葱」と呼ばれるものです。
葱にはこのほかに「分けつ葱」というのもあります。

前者は現在スーパーに売ってる葱、後者は深谷葱が有名です。
葱には在来種がたくさんあり、下仁田葱や松本一本葱なども
分けつせずに一本で生えますがスーパーの一本葱とは違うものです。

スーパーのいわゆる「一本葱」は外側の泥の付いている部分が一枚むいてあります。
これは出荷前にむくのですが、人が手作業でちまちまむくわけではなく、
外側に切れ目を入れ、エアーを吹き込んで一枚ぶっ飛ばす的な機械を使います。

「機械で皮をむく」ためには、そもそもの葱がむきやすいことが前提になります。
ということで「一本葱」は皮がむきやすいという方向に品種改良されました。

皮がむきやすい=葱の皮が厚い=硬い ですから、
食感とか味はちょっと後回しになったのかもしれません。

わたくしが産地担当をしていたころ「消費者が泥付き葱を嫌うから
むき葱を出荷してもらえないか」と産地に打診したことがありました。

わたくしの産地は深谷葱を栽培していましたが、
葱自体がやわらかくヘロヘロしているためむき葱には向きません。
深谷葱は青いところも食べられるため、むき葱で葉切りにするのにも向きません。

しかし農家の反発は手間の問題ではありませんでした。

「せっかくおいしい深谷葱をつくってるのに一本葱を作れというのか。
あんなにおいしくない葱をつくってどうする。大地はおいしい野菜を扱うんじゃないのか」

ヒイイーごめんなさーい!!


むき葱の話はその後一度立ち消えになりましたが今はどうかな。

当時、本庄・岡部の産地担当であったわたくしは、自分の担当産地の葱、
つまり深谷葱しか食べておらず、一本葱の味をあまりよく知りませんでした。
産地訪問の帰りにどっさりお土産にもらった彼らの葱はいつもとてもおいしくて
東京の葱を食べられるようになったのはこの方たちのおかげでもあります。

彼らがつくっていたのは、深谷葱のなかでも作りづらいけどおいしい「農研2号」と、
もとは農研だったものを長年自家採種しているほんとにやわらかーいおいしい葱でした。
今考えるとわたくしはことさらにおいしい葱を食べていたのですが
当時は自分の幸運さにまったく気づいていなかったのです。ううううう。

そして退職後、一本葱を食べてわたくしは彼らの言葉の意味を思い知ったのでした。

スーパーの一本葱は、消費者の「泥付き葱は台所が汚れるからイヤ」という欲と、
「泥付き葱は売れないからむき葱をつくってほしい」という小売の欲と
「むき葱が売れるなら手間の掛からないむきやすい新しい品種をつくろう」という
市場とJAの欲が組み合わさって生まれたものです。

消費者の「欲」「わがまま」が作物の性質を変えてしまういい例とも言えます。

昨今のスーパーにはすでにむき葱しか並んでいません。
わたくしはそれを見るたび、わたくしたち消費者には
ほんとうにおいしい葱を食べる機会すら与えられていないのだなー
一生「一本葱」しか食べずにいる人もいるに違いない。なんちて思います。

「泥付きがイヤ」って言ってたらおいしい品種を食べる機会がなくなった。
悲しいことですが、もしかしたら自業自得かもしれません。

しかし、こんな小さなことが多様性が失われるきっかけになるのだとしたら?

であれば、わたくしたち消費者は日々のお買いもので何を選択するか
しっかり考えていく必要があるでしょう。

なくなったものを復活させるにはすごーくエネルギーがいるのです。
食べられる、買ってもいいと思える葱がなくなること以上に、それは大変なことなのです。


にほんブログ村 環境ブログ 有機・オーガニックへ
にほんブログ村
関連記事
Share

Comments 0

Leave a reply

456789'.split(''),s='';for(var i=0;i