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「タネは誰のもの?」という素朴でむずかしい問いかけ

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Byほんたべ

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山梨県のすもも農家が育種したオリジナルすもも。名前はありません。
自分の畑で芽を出したすももを生らせてみて選抜したんだとか。
病気にも虫にも強くわりとおいしいけどべらぼうにおいしいわけではない、
ってところがまさに「オリジナル品種」って感じ。



わたくしが以前担当していたぶどう農家にオリジナル品種を作る
「育種」が趣味の方がいらっしゃいました。

彼はぶどうが大好きなので「ぶどうの精」と呼ばれていました。
新品種を数種類つくっていましたがとくに品種登録はしていませんでした。

なぜなら「品種登録」にはけっこうなお金がかかることに加え
登録して「シャインマスカット」のようなスター品種にでもなって
バンバカ売れればいいのですが、売れなければ登録費用ぶんマイナスです。

さらに登録の更新の際にもいくばくかのお金がかかりますから
費用対効果を考えると品種登録などしないほうがいいのでした。

彼は毎年「これ」と思ったぶどうの雄花と雌花をかけ合わせて種を取ります。
ぶどうのタネをまき、接ぎ木できるほど大きくなるのに約3年。
そこから台木についで果実がなるまでに約3年。性質が安定するのに3年。

初なりのぶどうにマスカット香が出て喜んだけど安定したら香りがなくなる、
味も香りもいいぶどうだけど収穫間際に裂果する、病気に弱い、色が出ない、
粒が小さい、大きい、全然おいしくないなど、10年かけて育種しても
モノにならないものがほとんどです。

何百と育種していいぶどうになったのは5種類程度だと言っていました。
あー大変。好きじゃないとできません。

下仁田葱をつくっていた農家が、在来品種の赤葱を掛け合わせ、
赤い下仁田葱を作ってみていると言っていたことがありました。
見せてもらうと一番外側の皮だけが赤く、二枚目は赤くありません。
何度タネをとっても「下仁田赤葱」といえるほど赤くならないのでした。

彼はまず、下仁田葱と赤葱の花粉を掛け合わせ、
翌年できた最も赤い下仁田葱を選抜しました。さらに翌年も栽培し選抜します。

好みの性質のものが生まれるまで選抜し続けなくてはなりませんが
その後できたという話を聞かないのでたぶん頓挫したのでしょう。

あー大変。
個人レベルの育種ってのはほんとうに大変なことなのです。


しかしこの場合「このタネ(品種)は誰のもの?」と問いかければ
「開発者、つくった人のもの」と誰にでもわかります。
この権利を守る法律もあります。それが「種苗法」です。

しかし日本はこの権利がわりとグズグズというか、例えば果樹の場合、
小さな枝をひとつ入手すれば次々に増殖できます。えーと、開発者の権利?
なにそれ? 的なことはしょっちゅう起きているのではないかと思います。

またF1のタネを取り続けて増殖したとしても日本では罰せられません。
日本の法律は種取りを一部のものしか禁じていないからです。
タネの権利は開発者にあるけど実はみんなのもの、なのかもしれません。

さてそこで悩ましい、というかわたくしにはよくわからないのが
もともとその土地にある在来品種のタネは誰のものか、ということです。

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これが下仁田赤葱だ!!! でも外側一枚しか赤くない!
どーやっても二枚目が赤くならないって言ってたけど、
その後どうなったのかなー。完成したら楽しいだろうなー



在来品種ブランドとして名高い「京野菜」の場合のブランドは
「登録商標」という形でJA京都で管理されているようです。
しかし、いわゆる京野菜のタネは一般でも販売されています。

たとえば茨城県の農家が賀茂茄子のタネを購入し、茨城県で栽培して
「賀茂茄子」という名で販売してもとくに問題ありません。

野菜には原産地表示義務がありますから、見ため的には
「茨城県産の賀茂茄子ってなんちゃって賀茂茄子じゃねーの?」とか
消費者に思われるかもしれませんが、法的には問題ありません。

この場合の「タネは誰のもの?」という問いにも
「みんなのもの」と答えられるでしょう。
タネは誰でも買うことができますし、とくに囲われていないからです。

しかしそうではないブランド野菜もあります。

例えば山形県の「だだ茶豆」のタネの一部は特定の地域でしか流通していません。
また、秋田県のある大根は成長点が切り取られて販売されているそうです。
大根は成長点(頭部分)があればタネが取れるからです。

大根の頭を切って水を張ったお皿を置いておくと葉っぱがびゅんびゅん伸びます。
大根どんだけ雑なんだとか思いますが、あの成長点部分を土に埋めると
実は大根は立派に成長し、花をつけ、最後にはタネもとれます。

雑だわー。大根。

アブラナ科ってほんとにバカっぽい、というか生命力が強いのでしょう。
頭がついてるとよそで種取りをされる可能性があるということで、
それを防止するために頭を切り取って販売しているのでした。

「むー。そこまでするかー」とわたくしはしみじみ思ってしまいました。

在来品種とは名もない農民がタネを取り続けて今の時代にあるものでしょう。
それがお金になると「誰か」が権利を主張する、ということです。

ブランドの管理なら商標登録でJAなり自治体がすることも可能でしょうが、
タネの権利は誰に帰属するのでしょうか。 
開発した人は特定できないし種取りしてきたのは不特定多数の農家では?

わたくしにはここんとこがいまひとつわからないのです。
タネは誰かのものではなくみんなのものではないのでしょうか。
でかい話になりますがタネは「人類共通の資産」なのでは?

最近では「日本の種を守ろう」という人たちがいて、わたくしは
「日本の種を誰からどう守るのか」イマイチわからず困っています。

というか「日本の種」とはまず何のことなのか。登録品種のこと?

では品種登録されているものを何からどう守るの?
誰かわたくしにわかりやすく教えてください。


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