東北の春は短い。そして圧倒的に美しく、過剰である

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Byほんたべ

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「青菜(せいさい)」と生揚げの煮浸ししらたきで増量。アブラナ科のトウって
ほろ苦くて油の風味とよく合っておいしくていくらでも食べられちゃう。



2017年11月に開通した「東北中央自動車道」を通って赤湯・高畠に行ってきた。

以前は福島飯坂ICから赤湯まで約一時間の山道を行かなくてはならなかったが、
なんと東北中央自動車道を通ると福島JCTから35分で南陽高畠ICに到着なのだ!

すげー近いぜ!! 赤湯温泉!!!!

しかし福島飯坂ICの手前にある安いガソリンスタンドが使えなくなった、
ということに帰り道気づいて悲しくなるわたくし。うううううう。

わたくしのナビは購入後かれこれ10年経っており情報の更新ができない。
つーことでナビ上では道なき山のなかを延々と走っていたのだが、
実際に東北中央道はトンネルと橋で構成されており、大変とてもお金がかかっている。
にもかかわらず、今んとこ福島JCTから米沢北ICまでは無料区間である。太っ腹だのう。

しかし、雪に降り込められる栗子峠(一部橋アリ)を冬季に通るのは激コワではあるまいか。
絶対に冬に車で山形に行くのはやめようと心に誓うわたくし。

さて、ナビ上に存在しない福島JCTを東北中央道方向に向かっていたとき、
高速の脇の畑に桜が開花していたのを発見した。おお、福島は今桜が満開なのか、
などと思っていたら、少し先に桃が、そして梨の花も満開であった。

梨と桃と桜が同時期に咲いとる!!(鳥取弁)

わたくしは、青森のりんご農家が以前言っていたことを思い出した。
「青森はねえ、梅と桃と桜がいっぺんに咲くの、ゴールデンウイークに」
てっきり騙されていると思っていたがほんとだった。すんませんI戸さん。

3月下旬から桜の開花予想をしつこくしつこーく報道する関東のメディアは
桜が咲いてしまうと桜の「さ」の字も言わなくなるが、桜前線はその後ものんびり、
そしてひっそりと北上し、ゴールデンウイークに一気に開花するのだ。
しかも、関東では順序を守って開花する梅、桃も伴って。

実際に見ると不思議だ。可憐な桃とゴージャスな桜が隣同士いっしょに咲いている。
思わずウキウキ心躍ってしまったが、心躍らせつつ、わたくしはふと気づいた。
桜と桃が咲き乱れ、道端には大量のつくしが出て、木々の新芽、
草花や山の緑、すべてが美しく、そしてなんとなく過剰なことに。

その過剰な春を土地というか地面というかこの地域全体が楽しんでいるようだ。
空気の色やニオイがいつもと違ってキラキラしているのだ。

なぜだろう?

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上杉鷹山公が栽培を薦めたというウコギ。トゲトゲがあるので常は垣根として、
春先の新芽を食料として使う一粒で二度おいしい作物であります。
天ぷらやごはん、味噌と和えたり独特の香りと風味が癖になる味。


わたくしの故郷・鳥取は豪雪地帯だが3月になればスカッと雪はなくなる。
海があるので昔から食べものにあまり困ることはなかった。
春はそれなりに楽しいが、待ち焦がれる、というほどでもない。
冬の空は湿っぽく陰鬱だが、なんだかんだ言っても温暖な地域である。

しかし山形県の内陸部はそうではない。

冬の間は雪に降りこめられ野菜に困ることになる。そのため昔から
冬に備えて主婦は夏に収穫できたものをせっせと干して保存食にしていた。

スベリヒユやナス、青菜、あけびの皮など余ったものはなんでも干す。
水に戻して甘辛く煮付けるとだいたい皆同じ味になるがそれでも干す。
「干さなきゃって思うんだよね。たぶんDNAに刻み込まれてるんじゃないかな」と
いつもお邪魔するお家の方が言っていたがだぶんそうなのだろう。

お店に行けばいつでも新鮮な野菜が買える昨今では想像できないが、
そうしないと家族が飢えるのだから必死だったのだ。

だからこそ、春先に雪がなくなったら立ち上がってくるトウ立ちの菜っ葉、茎立菜や、
元気よくわさわさと茂るあさつきを、皆が待ち焦がれていたのだろう。
今年も長い冬が終わって春が来た! と野菜で感じたに違いない。

そう言えば、以前鶴岡の農家が、あさつきの球根をお風呂場であたためて芽を出し、
少し伸ばして食べる「ひろっこ」という野菜についてこんなことを言っていた。
「ひろっこが食卓に出るともうじき春が来るって思ってウキウキする。
ひろっこは春を感じる野菜。冬の終わりの象徴でもあるんですよ」


わたくしは近所のスーパーで鹿児島産のたけのこやキヌサヤが並び、
ほんたべ農園で菜の花が咲き始めると「春が来たなー」とぼんやり思う。
東京の春のしるしは桜の開花、しょぼしょぼ生えるつくしなどで散発的に現れ、
なんとなく春になる。季節の移り変わりはだらだらとだらしない。

しかし東北では、桃や桜のいっせい開花、ウコギの新芽、茎立菜のトウなどと共に
春は一気に、過剰なまでのメリハリをつけてやってくる。

寒い冬が長い分、春の訪れへの憧れは大きい。
ヒトだけでなく、木々や草花、地面も喜んでいるように見える独特の空気だ。
今までわたくしが見たことも感じたこともなかった「春」である。

「食べもので季節を感じる」などとよく口走ったりしていたが、
「鹿児島産のたけのこで春とか言ってもなーあぁぁぁモゴモゴブツブツ」 (゚∀゚)
などと、来年からどうしようと思うわたくし。ううううう。

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こぼれタネから生えてきたふきの群生のなかの「ちりめん五月菜」。
葉先がちりめん状で食感が楽しく、青菜よりも少し早くトウ立ちするそう。
「茎が好き」っていう置賜地方の人の気持ち、わかるわー。おいしいもん。



これから米農家は稲の苗をつくりゴールデンウイークすぎには田植えを
果樹農家は花が咲けばシーズンスタートで作業は待ったなしである。

桜の開花が関東よりもひと月遅い東北の春は短い。
短いからこそ美しく過剰なのかもしれないなー。
なんちてしみじみ思った美しい体験でありました。


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