幻の肉「尾崎牛」の幻の理由を聞いてみた-尾崎牛・尾崎宗春さん

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Byほんたべ

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尾崎牛のユッケ。O-157で死者が出て以降、牛肉のユッケは厚生労働省の指定した処理方法で
処理することが求められております。尾崎牛のユッケを食べてもらいたい! という思いで、
ユッケのためだけに処理施設をつくってしまったという尾崎さん。スゴいわー。
そんな人見たことないわー。そこまでして「食べてもらいたい!」というユッケは
牛の脂が口中で軽やかに溶けていき、とてもおいしいものでした。



和牛と言えば神戸牛、次に松阪牛、んで、米沢牛とかその他の名が思い浮かぶ。
全国各地に和牛のブランド名があるが、最高の味とか言われるのはほんの一部だ。

これらのブランドは一定のルールを守って育てられた牛に与えられている。
世界中で名前だけ流用した「なんちゃって和牛」が売られ始めている昨今では、
但馬牛や神戸牛はGIマークに登録され、ブランド保護に力を入れていたりする。

一部の「和牛」はすでに世界のブランドになっているということだ。

さて、一般的に地域の名前がついているブランド和牛のなかに、
唯一、自らの名前を冠した「尾崎牛」という和牛が宮崎県にいることを最近知った。
ネットで検索すると「幻の尾崎牛」などと呼ばれている。

「幻」と呼ばれる主な理由は、ひと月に40頭しか出てこないからだ。
このうちの20頭が海外へ輸出されており、国内で販売されるのは20頭である。
今月から毎月60頭出荷されることになったが、やはり半数は海外への輸出だ。

なぜ海外を視野に入れているのか、また、なぜ幻なのか。
「尾崎牛」の作り手である尾崎宗春さんに、尾崎牛を食べながらお話を聞いてきた。

いろいろと驚愕することがあったので、項目ごとに説明したいと思います。

1.和牛でも突出したオレイン酸含有量の多さ

ホクレンのサイトによると、牛の脂肪の融点は40℃~50℃だそうである。
https://www.hokuren.or.jp/dobeef/syokuiku/interview/1_1.html

加熱するとめっちゃおいしい牛の脂も、生&一度焼いて冷めるとおいしくない。
これは、牛肉の脂肪がヒトの体温=口内の温度では溶けないためだ。

生のまま、または冷めた牛肉の脂はねちゃっとした不快な食感で肉の味の邪魔をする。
だから和牛の霜降り肉のユッケはあまりおいしく感じられない。
また焼いだだけの牛肉も、冷めると脂肪が固まってしまうためお弁当にはあまり向かない。

というような牛肉事情のなか、尾崎牛の脂肪の融点を聞いてみたら、
なんと28℃程度というではありませんか。ひゃー、ビックリ!!
理由は、不飽和脂肪酸量(主にオレイン酸)が多いことにある。

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牛タン、厚切り。食べた順番に並べております。んまかったです。
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牛タン焼いてるとこ。あとで気づいたのですが、肉があんまり縮まないのよね。
どういう理由なんだろう? そう言えば焼肉屋さんの牛タンって、基本的に米国産って知ってました?


神奈川県の「県内産牛肉の脂肪酸組成向上にむけた取り組み 」によると、
黒毛和種は一般的な国産牛(ホルスタインや黒毛とホルスタインのF1)に比較して、
そもそも不飽和脂肪酸の含有量が多いそうである。知らなかったー。
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/866702.pdf

不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)とそれ以外(リノール酸・リノレン酸など)だが、
このなかの「オレイン酸含有量」が多いと食味がいいと言われる。

前述のPDFによると、一般的な黒毛和種のオレイン酸含有量の平均値は50%程度だ。
50%がどんなもんか想像がつかないが、実はわたくしの故郷・鳥取に
わざわざ「オレイン55」と名付けられている黒毛・鳥取和牛がいる。ということは。

オレイン酸が55%含まれれば食味がいいと言えるからブランドになる
=オレイン酸含有量が高い牛は価値が高いということなのだ。

さて、そこで尾崎牛である。

尾崎さんはすべての牛のオレイン酸含有量を調べている。ってそれもすごいけど、
数値を見せていただくと、オレイン酸含有量は平均して64~68%なのだった。

おお! めっちゃ高いではありませんか!

また「大量摂取に注意しましょう」とよく言われる飽和脂肪酸値は
一般的な黒毛は30%~40%程度だそうだが、尾崎牛は23%程度とやたらと低いのだ。
これはもしかしたら「尾崎牛=健康にいい牛」と言えるのではあるまいか。

そして「健康にいい」と思える理由は他にもいろいろあることが判明した。

2.飼料は毎日朝と夜の2回、自家配合という驚きのこだわり


牛の飼料というと、農家がちまちま毎日つくっているように思うが、
自家配合は「配合」という手間がかかるので、一般的には配合飼料が使われている。
配合比はオリジナルだったり、ブランド牛は指定されていたりといろいろなのだが、
なんと、尾崎さんは毎日毎日朝夕の2回、考え抜いたオリジナルの飼料を配合して与えている。

1000頭分の牛の飼料を朝夕2回!? 想像するだけで大変そうだが、それよりすごいのが
飼料に抗生物質や防腐剤を入れていないことである。そのため、残ると全部捨ててしまう。
(飼料には予め防腐剤や抗生物質が添加されていることが多いのです)

飼料の内容は、ビールの絞り粕(大麦)、トウモロコシ、海藻、きなこなどだが、
ポイントはビールの絞り粕だ。

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牛タンの次はシャトーブリアン。ピンク色に見えるほどサシが入っております。
尾崎牛がどんなものかわかる前なのでサシの量にビビっていますわたくし。

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尾崎牛は基本的にお醤油とわさびでいただきます。
年寄りなので一切れでじゅうぶんです。チョー満足度が高いです。
あああ甘くておいしかったー、シャトーブリアン(つまらない感想ですんません)



「ビールは発酵してるでしょう? だから発酵飼料として使えると思った。
発酵飼料は牛の内臓環境が良くなるからね。ビール粕を使おうと決めたとき、
いくつかのビール会社にその話をしに行って工場を見学させてもらったの。
そしたら、絞れるだけ絞り切ってほんとにカスしか残っていないビール会社があった。
ああ、だからあんなに味気ないビールなんだなーってわかったよね。

それからそこのビールは飲まないようにしてる(笑)
自分で食べてもおいしいと思えるものを牛にもやらなくちゃ」

尾崎さんは牛の霜降り(サシ)は血統(DNA)によるものだが、食味は飼料で決まると考えている。
これは、長年、牛と飼料の研究をしてきてわかったことだ。
その知識をもとにして、今の飼料配合にたどり着いた。

「牧場を継ぐことを決めたとき、アメリカに行って牛の勉強をしたいと思った。
アメリカの牛がどんなふうに作られてるか知らないと勝負できないでしょう。
で、アメリカで2年間勉強した。そうしたらアメリカでは、早く大きくするために
すごいことをやっている。

例えば、10kgの穀物飼料を与えると、牛は一日何kg太ると思う? 1kg大きくなる。
これが草だと700gくらい。で、穀物に肉骨粉を入れると1.2kg太る。

そんな技術を持ってる国と同じことをしていては、価格で勝負できないと思った」

米国ではさらに早く太らせるため、エストロゲン(成長ホルモン剤)を使用する。
実際にどうやってるのか聞いてみると、耳の後ろに小さなカプセルを埋め込むそうだ。
これを使えば増体が1.2kgから1.5kgになる。

米国の牛の飼育期間はだいたい19か月ほど。早く大きくして早く肉にする飼育方法である。
日本で同じ肥育をやっていては、安価で売られる輸入牛肉に勝つことはできない。
また、肉骨粉やエストロゲンを使うような牛づくりもしたくないと考えた。

「おいしくて安全で、自分の子どもにも食べさせたい肉。世界に通用する肉がつくりたかった。
だから飼料にもこだわる。毎日2回つくることにもこだわる。水にもこだわる。
うちの牧場の水は天然の湧き水なの。水道水じゃおいしい牛肉はつくれないよ」


話はこのあと、肥育目的の抗生物質の話にもなるのだが、
文字数が多くなったので続きは次回ということで。

尾崎牛WEBサイト 食べてみたい方はここでご注文できます。
http://www.ozaki-beef.com/company/about.html

続き→https://hontabe.blog.fc2.com/blog-entry-603.html

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