幻の肉「尾崎牛」の幻の理由を聞いてみたその2-尾崎牛・尾崎宗春さん

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Byほんたべ

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尾崎牛の作り手・尾崎宗春さん。何を質問しても、
よどみなく答えてくださいました。しかも話がわかりやすい!
貴重な畜産情報もいろいろゲットできて、わたくしとてもしあわせでした。



1 抗生物質の飼料添加はいっさいなし!!!

昨年の11月、WHOは畜産の日常的な抗菌剤の使用を禁止するよう勧告を出した。
https://www.sankei.com/life/news/180405/lif1804050016-n1.html
↑ とてもわかりやすい産経のネット記事

ヒトの医療現場のみならず、畜産業界で抗生物質が多投されていることは周知の事実である。
世界的にはずいぶん前からMRSAなどの耐性菌が問題になっていて、
EUではすでに畜産物への成長促進目的の抗生物質使用は禁止だ。

日本では2016年4月に厚生労働省からアクションプランが策定されたが、
読んでみるとイマイチ腰が引けているようである。

消費者に「抗生物質を使った畜糞堆肥を使って栽培した野菜は大丈夫か」
などと質問されることが多いが、抗生物質を野菜が吸収なんてのはどうでも良くて、
実は土壌微生物への影響のほうがはるかに危険である。
恒常的に微量な抗生物質が投入されることにより、耐性菌が発生する可能性があるからだ。

ということで、WHOの勧告は世界的危機に対しての正しい勧告なのだが、
なんかあんまりピンときていない(あるいはピンがズレている)人が多そうだ。

さて、意外と知られていないのだが、家畜への抗生物質投与は病気のときだけではない。
牛・豚や鶏(卵・肉)などが生まれてすぐに食べる飼料にも抗生物質は配合されている。
これは、生まれたばかりで免疫がまだじゅうぶんではない家畜を護る目的もあるが、
初期の抗生物質投与は体重を増やす、つまり増体率が良くなるからという目的もある。

平成28年に農林水産省から畜産農家向けに配布された「飼料の適正使用について」によると、
「飼料が含有している栄養成分の有効な利用の促進」という項目に抗生物質は17種類登録されている。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/siryo/pdf/chikusan.pdf

表2の「抗菌性飼料添加物を添加してよい飼料及び添加可能量 (H28.3.1現在)」を見ると、
豚はほ乳期と子豚期のみの使用になっているが、牛については肥育期まで使用できるものがある。
つまり、牛は肥育期間中=出荷前まで、抗生物質の飼料添加が可能ということだろう。

わたくしは以前これを発見した際に「まさかなー」と思った。
出荷直前まで添加されているなんてことがあるだろうか。
なので、肉用牛の抗生物質の飼料添加は一般的なのかどうか、率直に聞いてみた。

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なんかこう味覚がビンボくさいのかどうか、ランプがめっちゃおいしかったー。
柔らかくてしっとりしてて、フツーのランプはこんなんじゃないよなあ。
希少部位のザブトンとかミスジとかはもう、とろけるような味でした。



尾崎牛の飼料には抗生物質は添加されていないが、やはり一般的にはされているようである。
抗生物質を与えると牛の胃の中に大量に住んでいる微生物に影響を与えそうだがどうなのか。
そう言えば、肉牛の内臓廃棄率はどうなんだろう。少し調べてみたら、
内臓廃棄率で唯一以下のデータがヒットした。

神奈川県の「牛のと畜検査結果の統計調査」の
「表1 合格、一部廃棄、全部廃棄及びとさつ禁止の状況」によると、
一般的な肥育牛の内臓廃棄率は77.4%となっている。
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/877666.pdf

尾崎さんに聞いてみた。

「一般にはあまり公開されてないけど、内臓廃棄率はだいたい8割程度と言われてます。
それに比べると、尾崎牛の内臓廃棄率は1割程度。健康に育ててるから内臓も健康なの。
だから、尾崎牛を扱っている焼肉屋さんで出してる内臓は、みんな尾崎牛のもの。
どう育ててるかちゃんとわかる牛の内臓なら、安心して食べてもらえるでしょう」

えっ! 自分で育てた牛の内臓を食べられるの? わたくしはビックリした。
一般的に内臓肉は別ルートで販売されることが多いのだ。
だから、自分の牛の内臓を指定でゲットするのは非常にむずかしい。
しかし尾崎さんはそれを可能にした。信頼関係によるものだと言う。

尾崎牛を生で食べてもらいたいからユッケ用の肉をつくる施設をつくった、
内臓も食べてもらいたいから、内臓が入手できるよう人間関係をつくった。
尾崎さんのやることなすことすべて破格に思えるのだが、
それは自分の育てた牛をおいしく食べてもらいたい、という思いによるものなのだ。

2 いつ食べてもどこで食べてもおいしいお肉 

尾崎牛は現在ドバイなど海外30カ国に輸出されており、いい値段で売れている。

「世界にはものすごいお金持ちがいるから、少々高くても平気なの。
そのお金持ちとつながると、口コミで次々に取引先が増えていく。
日本は今、安いものしか売れなくなっているでしょう。
だったら、海外に高くていいものを買ってくれる顧客を見つけることだよね。
そのかわり、いいものをつくらないとダメ。
いつ食べても、どこで食べてもおいしいお肉じゃないと」

おいしいと評価される松阪牛でも、昨今「あれ?」という味のものが多いと尾崎さんは言う。
昔はていねいにつくられていた松阪牛だが、今はブランドの上にあぐらをかいてしまった。
だから味が落ちている、と尾崎さん。

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尾崎牛の内臓。左下からセンマイ、その上レバー、その横小腸、その下ツラミ。
ツラミって牛のほっぺのお肉らしいですが、すげーおいしかった!!
この日食べたお肉の中で一番おいしかったかも!!



「昔は小規模な農家が多かったから、34か月とか長い間かけて大切に育てていた。
ブラッシングなんかもよくやってね。でも売れるようになったら34ヶ月かけなくても、
29ヶ月とかで出しちゃっても売れるわけ。そうなると手を抜く人も出てくる。
40ヶ月齢にもなる松阪牛なんか、ほんとにおいしいよ。でもそういうのは少ない。
いつ食べても同じ味でなくなると、ブランド力が低下するでしょう」

牛肉の味は月齢が高くなるとおいしくなると一般的に考えられているが、
長い間生かしておくと肉の量は増えないわりに飼料の経費がかかる。
だから月齢を短くすれば経費削減になる。しかし味がのらない場合もある。

そう言えば、あか牛や短角も月齢が長いほうがおいしいですよね、と聞いてみた。

「黒毛は月齢が長いと脂肪が筋肉に入って霜降りになるけど、短角牛やあか牛は
脂が外側にどんどんついて歩留まりが悪くなる。だから長けりゃいいってもんでもない。
あと、赤身の和牛ならA2の黒毛でいいじゃんなんて言う人がいるけど、
黒毛って基本的に霜降りになる性質を持ってるから、
A2をつくろうと思ってもなかなか作れない。だいたいA5=3割、A4=4割くらいになっちゃう。

こういうのは牛の勉強してないとわからないんだよ。
ちゃんと牛の生理や飼料なんかの基本的なことを勉強するのが大切なの」

尾崎さんは、子牛を見ればその牛がどんな肉になるか、ある程度わかると言う。
だから子牛市場では一番いい子牛を狙う。安い子牛を買ってもいい肉はできないからだ。

霜降りの度合いは飼料じゃなくて血統。つまりDNAで決まる。
だから子牛の性質がとても大切。でもねえ、子牛はこれからどんどん高くなるよ。
繁殖農家がこれからどんどん減っていくから肉牛の世界はこれからが正念場。
いかにいい肉をつくるか。それが評価される世界に確実になっていく」

尾崎さんが海外を視野に入れているのは、和牛業界全体への懸念があるからだ
昨今、国内では霜降り肉よりも赤身の肉が好まれる傾向にある。
霜降りにしていれば評価が高かった黒毛和牛には厳しい時代になりつつある。

また、子牛がいい値段で売れなくなると、子牛の繁殖農家が立ち行かなくなる。
繁殖農家が廃業すると子牛の供給元がなくなり、業界全体が危機的状況に陥る可能性もある。

しかし、海外に目を向けてみよう。海外には霜降りになる血統の牛(黒毛和牛)はいない。
つまり、霜降り肉にはまだまだ大きな価値があり、いい価格で販売できるのだ。
子牛を高く買って肉にして高く売れば、繁殖農家の経営を守ることにもなると尾崎さんは考えている。

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噛めば噛むほど脂がどんどん出てきて甘いなーと思ってたら、
知らない間に口の中からなくなっていました。小腸、おそるべし!!! すげーおいしかった!



3 宮崎の人にこそ食べてほしい

尾崎牛は、東京に数店舗、宮崎市内に数店舗食べられるお店がある。
売れている「幻の肉」なら東京に取り扱うレストランが増えそうだがそうではない。
東京よりも宮崎を優先したい。尾崎牛が食べたかったら宮崎に来てもらいたい、
と尾崎さんが考えているからだ。

「宮崎の人ってさ、マンゴーでもなんでも全部外に出荷しちゃって規格外品とか食べてるの。
それじゃダメだよね、おいしいもの食べないと。だから宮崎優先にした。
尾崎牛食べたいなら宮崎に来てねってこと。わざわざ食べに来る価値のある肉。
何か、お祝いとか、いいことがあったときに、ハレの日に食べるお肉。
尾崎牛は、そういうときに食べてもらいたい」

尾崎牛は焼いてもあまり肉が縮まなくて大きさが変わらない。
霜降りなのに、翌日は胃がもたれることもなく朝からちゃんとおなかがすく。

抗生物質の飼料添加を始め、畜産業界で「言ってはいけない」的な事柄も、
質問するとあっけらかんとすぐに答えてくださる尾崎さん。
それは自分の牛に「言ってはいけない」事柄が無いからだろう。

できている一部分のみ切り取って「優位性」をうたう牛肉が多いなか、
ほんとうに健康なお肉、安心して食べられるお肉ってこういうお肉かも、
とわたくしはしみじみと思った次第です。

口蹄疫とかでむずかしいかもしれませんが、今度は牧場に見学に行きたいです。
よろしくおねがいします、尾崎さん。

宮崎で尾崎牛が食べられるお店 
「くらした」http://www.kurashita.jp/

東京で尾崎牛が食べられるお店
「尾崎牛焼き肉 銀座ひむか」https://ginza-himuka.owst.jp/
「尾崎牛 丸子屋」http://marukoya.favy.jp/

今度、武蔵小杉の丸子屋に行ってみようっと!!!

幻の肉「尾崎牛」の幻の理由を聞いてみたその1はこちらから
https://hontabe.blog.fc2.com/blog-entry-602.html

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