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どんな商品にも物語がある-「物語」の魔法はまだ有効か?

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Byほんたべ

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ちびっちゃいし色もあんまり来てないこのぶどう。スーパーで売っててもたぶん買いません。
しかし「無農薬栽培のオリンピア」とか言われたら? オリンピア=おいしいけど希少品種。
さらにつくるのがむずかしいのに無農薬でつくるなんてスゲー! てな話になります。
説明がなければ「なに、このぶどう」です。オーガニックが説明商品である所以です。


わたくしが以前働いていた大地を守る会では商品の「物語」を積極的に伝えていました。

マーケティング戦略ではなく「有機農業界」ではそれが1975年からの常識、
というか、やらなくてはならないことだったからです。

理由をわかりやすく言うと以下のような感じです。

農薬を使わずに栽培された作物は市販のものとは見ためが大きく違います。
そのままで売るとただの「虫食い野菜」にしか見えませんが、
それらは生産者が農薬をできるだけ使わず有機質肥料で栽培したもの。
「見えない価値」があるものです。
また、多少の虫食いは安全の証拠でもありました(当時の考え方では)。

この「見えない価値」を伝えるために生産者の情報(物語)を提供する必要がありました。
オーガニック作物が「説明商品」と呼ばれる所以です。

そのほか、作物が生産者の物語とともに届けば、有機農業についての理解が深まり、
一般市場の「食べる人」「つくる人」という隔絶された役割分担ではなく、
大きな運動体(この場合大地を守る会)の一部という意識を持つことができる、
というような効能もありました。

これが有機農業運動を推進する原動力にもなったと言っても過言ではない
とわたくしは考えています。いや、言い過ぎかな。どうだろう。怒られるだろうか。

つーことで、大地を守る会では1975年から商品とともに情報を伝えることを使命とし
というかわたくしはそう考えており、在職中はそのような情報提供をしていました。
もしかしたら「物語を語り、その物語とともに商品を売る」というマーケティング手法は
有機農業界から始まったのかもしれません(言い過ぎか)。

さて、ちょうどわたくしが大地を守る会を辞めたあたりの2009年くらいに
「モノとともにストーリーを売る」というこの手法が一般にも注目され始めました。
なぜ2009年と覚えているかと言うと、大地を守る会の情報誌では物語が激減したのに、
一般的にはものすごーく物語が語られるようになり、当時のトレンドだったからです。

それ以来10年、この手法は定着したように見えます。が、まだ有効でしょうか。
商品とともに物語は語られまくり、なにがなんだかよくわからなくなっており、
なかにはどうでもいい物語も多々あるように見えるけど気のせいでしょうか。

実は大地を守る会のようなニッチな市場で適当な物語をつくってしまうと
その商品の品質が悪いと信頼をなくすため、めったなことはできません。
結果的に「品質の悪いものの物語は語らない」という自浄作用が働きます。

しかし市場が限りなく大きい「マス」だと話は別です。

物語に目がくらんでうっかり買った消費者に「あああああいい話につられて失敗したあ二度と買わん!」
とか思われても、次から次へといい話に釣られた消費者が買ってくれるのでとくに問題はないのです。

つーことで、リピートが多いほんとうにすばらしいものと、瞬間風速でしか売れないものの
二極化が進んでいるのではないかと想像していますがどうでしょう。
消費者がたくさんいれば一度しか買ってくれなくても売上を上げられる、
となれば、語らなくてもいい物語が語られている可能性はあります。

であれば、消費者は玉石混交の物語のなかから「ほんとうに優れているものを選別する」
という努力と眼力を持ち合わせることを必要とされているってことですなあ。
商品ひとつ買うのも大変です。

しかし実を言うと、どんな商品にも物語は必ずあるものです。
いいところが見つからない商品から物語をひねり出すことも可能です。

カリスマ販売員「売れる売れる研究所」の橋本和恵さんの講演で以前、
「あなたが販売する商品にはだいたい100人くらいの人が関わっている。
だからくだらないとかどうでもいい商品などない」
という話を聞いたことがあります。

この100人の工程のどこかに、キラリと光る物語は必ず見つかります。
デザイナーやコピーライターの手にかかれば、そこから壮大な物語が生まれます。
商品の品質が悪ければつくっている人を、つくっている人がなんだかなって人ならその地域を。
原料をどんどんさかのぼっていけばどこかに必ず語るべき物語があるのです。

見つければそれを景品表示法に触れない程度にふくらませ、若干のお化粧をすれば
なんのへんてつもない商品にステキな物語をくっつけて売り出すことが可能です。

てな感じで、右を見ても左を見ても「ステキな物語」だらけで食傷気味な昨今ですが、
わたくしはふと、あることに気づきました。

オーガニック業界がいまだに「安全安心」という物語を語りがちなことに。

キラキラした物語のなかにあっても「安全安心」は一定程度の共感を得ることは可能でしょうが、
「安全安心」で心がウキウキする人はニッチな人々ではないかと思えます。
だからこそオーガニックはニッチな市場なのか。いやそれではつまらないではありませんか?

安全安心以外の物語を語ろうではありませんか。
なにしろオーガニック業界の人はおもしろい人が多いのです。
おいしいものを作る人ほどおもしろい。それがわたくしの実感です。

が。

そう言えば最近の大地を守る会のカタログでは物語が語られなくなっています。
もしかしたらオーガニックではすでに「物語の魔法」が有効じゃないのかもしれません。
というか「オーガニック」がすでに物語だから、とくに語らなくてもいいのかも。

「物語を語らない」という選択は、もしかしたら業界最先端?
ますます勉強せねばなりませんなあ。


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