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「ていねいな暮らし」というステキな言葉についての考察

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Byほんたべ

10-18鳥取 038
GOTOトラベルで鳥取に帰りました。地域クーポンが使えるお店が少ないのですが、
割烹たくみでは使えるようです。使わなかったけど。で、お刺身盛り合わせ。
カンパチ・タイ・白いか・甘エビなど鳥取定番刺し身に加え、他県の方々には珍しいのが
ヨコワ(マグロのちっちゃいの)、サワラあたりでしょうか。うまかったす。



わたくしの母は電話交換士でした。
1週間に一度、4時から翌日の朝8時までという夜勤があり、
その前日は2時から21時まで勤務というシフトで働いていました。

産休が終わって、生後半年の赤ん坊のわたくしのめんどうを見られなかった母と父は、
夜勤の二日間、祖父の知り合いの家にわたくしを預け、めんどうを見てもらっていました。

18歳で鳥取を出るまで、ごはんを食べさせてもらったり裁縫の宿題をやってもらったり、
お弁当を作ってもらったりとさんざんお世話になった赤の他人のそのご夫婦を
わたくしは「おばちゃん」「おじちゃん」と呼んでいました。

おばちゃんは当時の日本の専業主婦そのままの人で、何でも作る人でした。
八百屋でいちごが安くなればジャムを作り、梅が出れば梅干しや梅酒を作ります。
おなかが弱いわたくしのために、梅エキスも手づくりしてくれました。

おはぎやぼたもち、お正月のお餅、お月見の団子、栗の甘煮などなど、
正しい日本の保存食・行事食は常におばちゃんが作ってくれ、母はまったく作りませんでした。

自分の母は何も作らないけど、おばちゃんがいつも何かを作っている。
微妙な位置にいたわたくしは、結婚後、おばちゃん的な暮らしに突入しました。

たくさん採れた果物はそのままではすぐにダメになるけど、加工すれば長く楽しめます。
保存食は、季節をジャムや果実酒に加工して、瓶に閉じ込めるもの、と気づいてからは
保存食づくりがとても楽しく、事あるごとに何かを作りました。

こういった「手づくり生活」のことを巷では「ていねいな暮らし」と呼ぶようでした。

わたくしも、大地を守る会の商品情報誌を制作していたころによく
「ていねいな暮らし」というキャッチーなコピーで記事を書きました。
自分自身の手づくり生活はたんに「自分の口に合うものを作りたい」というエゴと、
「大量にある果物を無駄にするのがイヤ」という経済的な理由ですから、
「手づくり=ていねいな暮らし」ではないと思ってたけど、キャッチーなので良しとしました。

では「ていねいな暮らし」とは何でしょう。

ジャムや梅干しなどまったく作らない友人が毎年味噌だけ手づくりする理由を
「味噌を手づくりしてるアタシがステキ」というコスプレだと言っていましたが、
これも「ていねいな暮らし」とは少し違う気がします。

SNSで季節になると梅だのジャムだの味噌だのの手づくりが発信されますが、
わたくしはそれを見るたび、彼女のその言葉を思い出します。もしかしたら
「ていねいな暮らし」的暮らしをしている自分のアピールかも、なんちて思うのですが、
ひねくれすぎでしょうか。いや、そうかも。というか、そうでしょう。

10-18鳥取 050
鳥取の家庭料理と言えば「カレイの煮つけ」です。このカレイの正式名称はなんなのか、
鳥取では「赤カレイ」と呼ばれていますが、よそでは違うらしいです。
ふっくらして白ごはんと食べるとほんとにおいしいんだよなあ。



さて、おばちゃんはお正月に毎年「栃餅」という茶色い餅を作っていました。
栃餅は栃の実を混ぜてついた餅で、独特の風味があります。

当時は栃の実なんて見たこともなく、ただの茶色い餅だと思っていましたが、
三朝温泉で栃の実を干しているのを見て、加工方法を調べてみたわたくしは驚愕しました。

なんと、収穫からアクを抜いて加工できる状態になるまでに一ヶ月以上かかるのですよビックリだ。

おばちゃんは栃の実をどこでゲットしていたのか、今となってはわかりません。
お風を薪で沸かしてたので、そういやわらびのアク抜きもやってたし、
梅エキスを毎年手づくりしていたくらいですから、栃の実のアク抜きとかへーきそうです。

以前、梅エキスを作ってみようとおばちゃんに電話してみたら、
「梅をすりおろして絞り、土鍋で十数時間ひたすらかき混ぜてアクを取りつつ煮詰めるだけ」
という気が遠くなるような手間のかかるシンプルなレシピを教えてくれました。

「梅をすりおろすとき、手もすりおろすから注意するように」と言われたわたくしは思いました。

ムリ!!! 自分のためでもムリ!! コスプレでもムリ!!!!
それを毎年家族のために作っていたおばちゃんとはどういう人なのか。
スゴい。スゴすぎるではありませんか。

土鍋で煮詰まっていく梅の果汁を見ながら、かき混ぜながら、彼女は何を思っていたのでしょう。
家族の笑顔か、おなかを壊してびーびー泣くわたくしの顔か、今はもう聞くことはできません。

でも「自分のため」ではなかったのではないかと思います。

「ていねいな暮らし」とキャッチーな言葉で表現される「手づくりの生活」。
そのなかには、わたくしのような「エゴ」や、友人の「コスプレ」も含まれています。

しかしわたくしはほんものの「ていねいな暮らし」を知っていました。

誰にも知られず、SNSで発信することもない、家族の健康を思い手づくりをしていた人の暮らし。
今の我が身を振り返り、そういうのはとてもムリと思いつつ、
先日鳥取に帰って懐かしく昭和の主婦である「おばちゃん」を思い出した次第です。

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